善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「アンダーグラウンド」他

イタリア・プーリアの赤ワイン「ネプリカ・カベルネ・ソーヴィニヨン(NEPRICA CABERNET SAUVIGNON)2019」

(写真はこのあとメインの牛ステーキ)f:id:macchi105:20210920165850j:plain

イタリアの老舗ワインメーカー、アンティノリがプーリア州で1998年から手がけるワイナリー、トルマレスカのワイン。当代のアンティノリの当主は26代目だとか。

ネプリカ・シリーズは、ネグロアマーロとプリミティーヴォ、カベルネ・ソーヴィニョンの頭文字を取ったもので、きのう飲んだのはカベルネ・ソーヴィニヨン100%。

 

ワインの友で観たのは、NHKBSで放送していたフランス・ドイツ・ハンガリー合作の映画「アンダーグラウンド」。

1995年の作品。

監督エミール・クストリッツァ、出演ミキ・マノイロヴィッチラザル・リストフスキー、ミリャナ・ヤコヴィッチほか。

 

かつてのユーゴスラビアの首都ベオグラードを舞台に、第二次世界大戦からユーゴ内戦までの50年に及ぶ激動の歴史を描いている。

ユーゴスラビア多民族国家で、「七つの国境 、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家」と表現されるほど。社会主義国家となってチトー大統領存命中は何とか1つにまとまっていたが、彼の死後は混乱を極めていく。

その多難な歴史を描く作品だが、ブラック・ユーモア満載のドタバタ調なので少しも暗くない。まるでファンタジーのような映画。最初から最後まで流れるトランペットを始めとするブラスの響きはロマ(ジプシー)の音楽だそうだが、元気が湧いてくる。

2時間50分の大作、と思ったら、これは劇場用の短縮版で完全版は上映時間5時間14分もあるそうだ。

 

1941年4月、ナチス・ドイツ進攻下のベオグラードでは、パルチザンの義賊・詩人にして共産党員のマルコ(ミキ・マノイロヴィッチ)が元電気工のクロ(ラザル・リストフスキー)を党に入党させ、活動を共にする。ナチスによる共産党員・パルチザン狩りが進むなか、マルコはクロを含む一族郎党を丸め込み、地下室(アンダーグラウンド)に退避させ武器の密造を行わせる。

一方、マルコとクロが互いに恋焦がれる女優ナタリア(ミリャナ・ヤコヴィッチ)は、障害者の弟と自分の保身のためナチス将校の恋人となっていた。ナタリアをめぐってマルコ・クロ・ナチス将校の四角関係になっていたが、すったもんだの末、マルコの妻となる。

マルコはパルチザンの英雄として祖国解放戦争を勝ち抜き、チトー大統領の側近となるが、地下の住人たちには「まだナチとの戦争は続いている」とウソをつき、武器の密造を続けさせる。地下の人々は、マルコが毎晩、「リリー・マルレーン」の歌とともに流すニセのドイツ軍の放送のおかげで、いまだに第二次大戦が続いていると信じていた・・・。

 

こう書くとマルコはとんでもない悪者に思えるが、マルコとナタリアもまた、地下の人々を裏切り続けることへの苦悩を抱えている。

そして、地下にいたまま50年がすぎて、世の中の動きを何も知らないまま地上に出てきた人々は、初めて故郷を国ごと失っていたことに気づく。

最後のシーンで、大地から切り離され、行く当てもなく浮かぶ島のような台の上で人々は陽気に歌い踊り続ける。それでも人は生き続ける、ということをいいたかったのだろうか。

 

当時27歳のベオグラード出身のセルビア人女優、ミリャナ・ヤコヴィッチ。美貌を武器に男と男の間を行ったり来たりしながら、ときに酒でウサを晴らしながらも、力強く生きる女性の姿を熱演していた。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたアメリカ映画「デッドマン」

1995年の作品。

監督ジム・ジャームッシュ、音楽ニール・ヤング、出演ジョニー・デップロバート・ミッチャム、ゲイリー・ファーマー、ランス・ヘンリクセンほか。

 

19世紀、東部から西部の田舎町マシーンにやってきた会計士ウィリアム・ブレイクジョニー・デップ)。町の会社に雇われるはずだったが、2カ月遅れてきたというのでそこの社長(ロバート・ミッチャム)から銃を向けられ追い払われてしまう。その夜、酒場の前で知り合った女と一夜を共にするが、その女は街の有力者でもあった社長の息子の許嫁で、見つかって銃を向けられたため反射的に発砲してしまう。自分も胸に銃弾を受けたものの殺人の罪を着せられ、追われる身となる。

追っ手から逃げる山の中で「誰でもない」を意味するノーボディーという名のネイティブアメリカン(ゲイリー・ファーマー)と出会うが、ノーボディーはブレイクをイギリスの詩人ウィリアム・ブレイクその人と勘違いし、慕ってくる。2人はともに旅を続けながら次々と襲いかかる敵を倒していくが・・・。

 

一風変わった西部劇。モノクロで、映像が美しく、音楽もよく、ときおりウィリアム・ブレイクの詩が挟み込まれたりして叙事詩的な展開。途中、残酷なシーンがなければもっとよかったのに。あれは必要だったのか?

「帰らざる河」や「眼下の敵」「狩人の夜」のロバート・ミッチャムが悪役の社長役で出演していたが、彼の最後の映画出演作だったようだ(2年後に79歳で没)。