善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「落穂拾い」他

アルゼンチンの赤ワイン「レゼルヴァ・カベルネ・ソーヴィニヨン(RESERVA CABERNET SAUVIGNON)2018」

(写真はこのあとメインのズッキーニの挽き肉挟み焼き)f:id:macchi105:20210728130107j:plain

生産者は「太陽とワインの州」といわれるアンデス山脈のふもと、メンドーサ地区でワインづくりを行っているボデガ・ノートン

カベルネ・ソーヴィニヨン100%。バランスのとれたフルボディ。

 

ワインの友で観たのは民放のBSで放送していたフランス映画「落穂拾い」。

「ダゲール街の人々」(1975年)に続いて、アニエス・ヴァルダ監督によるドキュメンタリー映画

2000年の作品。

監督、脚本、撮影、編集アニエス・ヴァルダ

 

ある日、ヴァルダ監督はパリの市場の前のカフェでくつろいでいると、取引の終わった市場に残された段ボール箱の中からさまざまな食べ物を拾う人々を見かける。形はきれいではないがまだ食べられるリンゴやミカン、パセリやセロリなんかを袋に入れて立ち去る人々。中には若い男性の姿もあった。

それを見てヴァルダが連想したのがミレーの「落穂拾い」だった。フランスでは落穂拾いとは、収穫したあとの田畑に落ちこぼれた穀物の穂を拾い集める貧しい人々の行為をいう。かつて農村地域で収穫期には必ず目にする光景だったというが、田舎では今も落穂拾いをしている人がいるのか?と疑問にかられた監督は、ハンディカメラを手にフランス各地の"現代の落穂拾い"を探す旅に出る。

すると、落穂拾いをする人はたしかにいた。それも、こぼれた穀物の穂どころではなくて、捨てられたジャガイモを何袋もいっぱいにして持ち運ぶ人もいた。なぜ捨てられているかといえば、大きすぎるジャガイモ、形が変になったジャガイモ、小さすぎるジャガイモは商品にならないからで、それを“失敬”しても、とがめられることはないのだ。

つまり“現代の落穂拾い”は、飽食や大量消費が進んだ歪んだ現代社会が生み出したものともいえるものだった。

 

それにしても、他人の畑の中に入っていって、収穫のあとにこぼれてそのままになっているトマトとかジャガイモだとか、規格外で捨てられものを拾って自分のものにすることは許されるのか?

日本だったら法律違反やモラル違反に問われるところだが、フランスでは許される、と映画の中で法律家らしき人が解説していた。

ただし、あくまで農家が収穫を終えたあとの日の出から日の入りまでに限られるらしいが、1554年にこれを認める勅令が出され、今も効力があるという。

落穂拾いを認める根底にはキリスト教の教えもあるようだ。

旧約聖書レビ記」には「穀物を収穫するときは畑の隅まで刈り尽くしてはならない。収穫後の落穂を拾い集めてはならない。・・・これらは貧しい者や寄留者のために残しておかなければならない」という記述があるという。

また「ルツ記」にも、落穂を拾って生活の糧にする貧しい人々の様子が描かれているという。

実はミレーが描いた「落穂拾い」の絵も、この旧約聖書の記述が下敷きになっていて、畑の持ち主が残した落穂を、近くの貧しい住民が拾い集めている姿なのだという。単なる農村ののどかな風景などではないのだ。

 

ヴァルダは、畑の作物以外にも、冷蔵庫とかレンジ、テレビなどの廃棄物を拾い集める人の姿も追っていって、拾ったもので芸術品をつくったり、家具を作ったりしている人も紹介している。

そうやって日々をたくましく生きている人々の姿を追いながら、ヴァルダはたびたび自分の手のしわを映し出し、「生きる」ことの意味を問う。やがて“現代の落穂拾い”を探す旅は、監督自身の内面と向き合う旅になっていく。

自分の人生も、ミレーの時代から変わらない落穂拾いの人生なのかもしれない。ヴァルダはそういいたかったのかもしれない。

 

ついでにその前に観たのは民放のBSで放送していたフランス映画「太陽のならず者」。

1967年の作品。

原題「LE SOLEIL DES VOYOUS」

監督ジャン・ドラノワ、出演ジャン・ギャバンロバート・スタック、マーガレット・リー、シュザンヌ・フロン、リュシエンヌ・ボガエルほか。

 

かつて強盗の名人として鳴らしたドニ(ジャン・ギャバン)は、今はフランスの小さな町で実業家として活躍していた。そんなある日、繁華街にある自分の店の前の銀行で、米軍が5億フランもの給料を受け取っている様子を見ているうちに、昔の癖で銀行強盗の計画を練っていく。そして昔の仕事仲間でアメリカ人のジム(ロバート・スタック)と再会したことをきっかけに強盗計画を実行へ移そうと決意。見事に大金を手中にするが、その鮮やかな手口から暗黒街の連中にドニの仕業と見抜かれ・・・。

 

渋い演技のジャン・ギャバンが健在。そしてなんと、テレビの「アンタッチャブル」でエリオット・ネスを演じていたロバート・スタックが、ジャン・ギャバンの相手役として登場していて、びっくり。しかもロバート・スタックはフランス語をペラペラしゃべっている。

彼はロサンゼルス生まれだが幼少のころからヨーロッパで育ったため、フランス語、イタリア語が堪能なんだとか。

音楽はフランシス・レイ。まるで前年に彼が音楽を担当した「男と女」みたいなメロディー。