善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「市民ケーン」

フランス・ラングドック・ルーションの赤ワイン「グラン・ヴァン(GRAND VIN)2017」

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ボルドーの名門ランシュ・バージュが南仏で手がけるワインで、ワイナリーの名はドメーヌ・ド・ロスタル。

シラー、カリニャン、グルナッシュという南フランスを代表するブドウ品種をブレンド。おいしいワイン。

 

ワインの友で観たのはNHKBSで放送していたアメリカ映画「市民ケーン

1941年の作品。

監督・脚本・主演オーソン・ウェルズ、ほかに出演はジョセフ・コットン、ドロシー・カミンゴアほか。

 

オーソン・ウェルズが25歳の若さで初監督。製作・脚本・主演もつとめた映画史にさん然と輝く作品。

英国映画協会が10年ごとに選出するオールタイム・ベストテンでは1962年以降5回連続で第1位に選ばれ、アメリカン・フィルム・インスティチュート(アメリカ映画の保存、振興を目的とした非営利機関)選出の「アメリカ映画ベスト100」(2007年)でも第1位にランキングされている(ちなみに第2位は「ゴッドファーザー」、第3位は「カサブランカ」)。

 

ばく大な資産と権力を持つ新聞王チャールズ・フォスター・ケーンが亡くなった。最後に残した“バラのつぼみ”という言葉の意味を探る調査が始まり、ケーンを知る人々の話から、その姿が浮かび上がるが・・・。

権力者の半生を複数の視点で回想する巧みな構成、視覚効果も駆使した斬新な映像表現で、世界中の映画作家に影響を与えた傑作。

主人公のケーンが新聞王といわれたウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルにしていて、ハーストの人間観や私生活までも赤裸々に描いていることから、激怒したハーストはあらゆる影響力を行使して上映させないように働きかけたという。そもでも上映されると、評論家を買収したり、映画界に圧力をかけたりして、第14回アカデミー賞では作品賞など9部門にノミネートされながら脚本賞のみの受賞にとどまった。

 

オーソン・ウェルズは監督としては25歳のときの「市民ケーン」が一番輝いていた気がする。生まれてから培ってきた感性とアイデアとエネルギーを一挙に爆発させたのだろうか。いやきっと、さらに斬新なアイデアは彼の頭の中で渦巻いていたに違いない。

彼は子どものころから詩、漫画、演劇に才能を発揮する天才児だったという。若くしてマーキュリー劇場という劇団を主催していたとき、ハリウッドから声がかかって劇団ごとハリウッドに乗り込んで、ムチャクチャ金をつぎ込んで「市民ケーン」をつくったらしい(最後のシーンの広大な敷地に並べられた遺品の数々だけでも目を丸くするほどスゴイ。その膨大な遺品の中に“バラのつぼみ”の意味が隠れているのだが)。

おかげで後半生は、巨額の製作費を回収するためB級TV番組の監修や脚本執筆に追われ、実現しなかった映画の企画や未完の脚本が数多く残されているといわれる。ハーストによる映画製作への妨害なんかも、のちのちまでつきまとっただろう。

 

そういえば、マンガの神様・手塚治虫は19歳で「新宝島」を発表し、「ジャングル大帝」は22歳のとき、「鉄腕アトム」の連載開始は24歳のときだった。彼は60歳という若さでがんのため亡くなったが、「アイデアはまだまだいっぱいあって、湯水の如く浮かんでくるんですよ」というようなことを亡くなる少し前のインタビューで語っていた。

天才は若くして輝いていて、才能は枯れることはなかったんだな。