善福寺公園めぐり

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きのうのワイン+映画「老人と海」

イタリアの赤ワイン「アリアニコ・デル・ヴルトゥレ(Aglianico del Vulture)2017」f:id:macchi105:20200623132205j:plain

写真はこのあとローストポーク

イタリア南部のバジリカータ州のワイン。

北東はプーリア州、北西はカンパーニア州、南はカラブリア州に接し、西にわずかにティレニア海、南はイオニア海に面していて、イタリア半島を長靴にたとえるとちょうど土踏まずの部分にある。

山岳地帯が州の面積の47%を占め、丘陵地帯が45%、平野部は8%しかない。

そういえば以前、同州にある洞窟住居で有名なマテーラを訪れたことを思い出す。

畑は北に位置するヴルトゥレ山近くの丘陵地帯にあり、1年中乾燥した風が吹いているので農薬などを使わずにすむ理想的な環境なんだとか。

ブドウ品種のアリアニコはバジリカータ州の赤ワインの主力品種で、その歴史は古く、ギリシャがこの地に植民地を建設していた紀元前のころに持ち込まれたという。

というわけで時代を感じながら飲む。

 

ワインの友で観たのはNHKBSで放送していたアメリカ映画「老人と海」。

原題「The old man and the sea」

1958年公開。

監督ジョン・スタージェス、出演スペンサー・トレーシー、フェリペ・パゾスほか。

 

原作はヘミングウェイの小説。ほとんどその小説を読むような映画だった。

舞台はキューバ

老人(スペンサー・トレーシー)はメキシコ湾に小船を浮かべる漁師だった。

84日間も魚が釣れない日々が続き、はじめは少年(フェリペ・パゾス)が助手として船に乗っていたが、少年の両親は老人を見限って別の船に少年を乗せるようになった。

しかし、老人を慕った少年はカラで帰ってくる彼を毎日迎えに行く。

ごつい手足と深いしわ。だが、海の色と同じ色をした目だけは生き生きとしている老人は、一人になり眠りに就くと、きまってアフリカの夢を見た。

やがてある日のこと、船よりも大きな巨大カジキが海面に姿を現す。そしてついに老人はそのカジキとの3日間の格闘の末に仕留め、魚を船に縛りつけて港へ戻ろうとするが、捕らえたカジキを狙ってサメの大群が現れ、老人はそのサメとたたかう。

ようやく港に戻ってきたとき、カジキは骨だけになっていたが、巨大なシッポが獲物の大きさを示していた。

カジキの残骸に驚く人々を見て、老人を心から誇りに思った少年が訪ねていく。すると老人は少年が入れてくれたコーヒーを飲みながらつぶやく。

「わしは運に見放されたんだ」

少年は「運は僕が持って行くよ」と言って再び一緒に海に出ることを伝える。

やがて眠りに就いた老人の夢に出てきたのは、アフリカのライオンだった。

 

スペンサー・トレーシーが見事なまでに老漁師を演じているが、何とこのときまだ58歳。演技力のすごさに圧倒される。

 

小説の舞台も映画のロケ地も、キューバハバナ近郊にあるコヒマルという小さな港町(ほかにロケ地はエクアドル、ハワイ、バハマなど)。

 

しかも、映画が公開された1958年はどんな年かというと、キューバではバティスタ政権打倒のためのカストロらによる革命の最中だった。

カストロゲバラらとともに定員12人の「グランマ」という小型ボートに総勢82人が乗ってメキシコからキューバに上陸し、ゲリラ攻撃を始めたのが1956年。当初は政府軍にコテンパンにやられていたが、1958年になると一大勢力になって政府軍を追い詰めるようになり、ついに1959年1月1日、ハバナ占領を果たして革命政権が樹立された。

よくそんなときにキューバでロケができ、映画がつくれたと思う。

 

ちなみに健気な少年を演じたフェリペ・パゾスは1944年ハバナ生まれの当時14歳。正しくはフェリペ・パゾス・ジュニアで、父親はキューバ革命にも参加した経済学者のフェリペ・パゾスという人物だという。