善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

「六月大歌舞伎」と「安保法案」

歌舞伎座の「六月大歌舞伎」夜の部を観る。
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今回の売り物は「新薄雪物語」の通し上演。ただし、前半部分は昼の部、後半は夜の部と2つに分断され、両方見せようとする松竹の策略か、あんまりにも長いので2つに分けるしかなかったのか。
何しろ1等席1万8000円もするから、一般庶民としてはどっちかを選ぶしかなく、夜の部と決めた次第。
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出演陣は超豪華。主な出演は菊五郎仁左衛門幸四郎吉右衛門で、現在のトップ俳優が勢ぞろい。ほかに、魁春時蔵錦之助橋之助芝雀又五郎歌六など。

席は前から3列目の真ん中あたり。役者の顔がよく見えるし、息づかいが聞こえるほど。花道にはちょっと遠く、立ち回りをみるには近すぎるが、今回はどっちかというと対話劇なのでちょうどいい。

それにしても「新薄雪物語」という芝居は、親がわが子のために命を捨てるという話。子は親に殉じ、家を重んじる封建時代にしては異色の作品だ。

仁左衛門の兵衛と幸四郎の伊賀守が互いに陰腹を切って対面するところ。仁左衛門の無言の演技がいつみてもすばらしい。自分のセリフのときでなくても子どもたちを思いやる気持ちが伝わってきて、役になりきっている。
意外だったのは、仁左衛門に負けじと幸四郎がよかったこと。陰腹の痛さに耐えながらヨタヨタと歩くところ、三人笑いでの笑いの表現といい、現代劇にも出演して培った感情表現がうまく生かされたのだろうか。

薄雪姫の米吉のお姫さまが、なかなかかわいくてよかった。

吉右衛門の団九郎は悪役だけど実は善人という設定。ああいういたずらっぽい役は吉右衛門にぴったり。
大御所3人が適役を演じていた。

悪役の渋川藤馬役の桂三の演技、なかなか手慣れててうまいなと思って劇場で「かぶき手帖」を買って調べたら、梨園の出ではなくて新派の俳優さんの三男で、松緑の部屋子になったり、守田勘弥の芸養子になったりしたものの、一時期舞台を離れ、平成6年に15年ぶりに復帰したという経歴の持ち主。いろいろ苦労した人らしい。応援しよう。

夜の部の最後は菊五郎、左団次らの「夕顔棚」。
とある田舎の百姓家で、旧盆の夕暮れどき、盆踊りの音を聞きながら老夫婦の思い出話と、若い男女とのやりとり。平和な生活の楽しさがにじみ出る芝居。菊五郎の婆役に大笑い。
巳之助の踊り、父親譲りかいつ見てもうまい。

ところでこの「夕顔棚」、1951年、つまり終戦から6年後につくられた作品で、戦争が終わって平和が訪れた喜びが込められているのだという。
だからこそ、みんなの顔がほころんでいる。

憲法違反の疑いのある安保法案(戦争法案という意見もある)が、あれだけ世論が反対し、憲法学者がこぞって批判しているのに、国会議員の数を頼りに強行されようとしている今、改めて「戦争と平和」について考えねばと思った。

芝居がハネたのは午後8時15分ごろ。劇場すぐ近くの「和もと」という居酒屋でイッパイ。
以前一度来たことがあるが、店の雰囲気のよさにひかれて再訪。

若い親方と、奥さんらしい女性のサービスがうれしい。
魚はどれも生きがよさそうで、長野・栄村の産とかいう野菜がおいしい。酒も長野の日本酒(銘柄忘れた)。

刺身盛り合わせ。
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ふつうの2倍の長さはあろうかというアスパラガスの焼いたのがウマイ!
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マコガレイの唐揚げ。上手に揚げてあるので、頭から骨まですべて完食。
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新じゃがとフキの煮物。
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ほかにも、きゅうりとワカメの酢の物が酒にピッタリ。
〆は茶ソバ。

シアワセな気分でご帰還。