善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

インドの仏展

5日5日のこどもの日は東京・上野の東京国立博物館表慶館で開催中の「特別展 コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏」展へ(17日まで開催)。
「インドの仏」という文字が手塚治虫のマンガの題字とよく似ていて、懐かしい気持ちになる(子どものころよく手塚治虫の題字の書き方をまねて書いたものだった)。
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表慶館明治42年(1909)に開館。ネオ・ルネサンス形式の建物。
正面入り口の2頭の青銅製ライオンは、向かって右が口を開け、左は閉じて、あうんの形をしている。
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かつてカルカッタと呼ばれたインド東部の都市コルカタににあるインド博物館は1814年の創立。日本はまだ江戸時代で、滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」の刊行が始まったのがこの年だ。
インド博物館はアジア最古の総合博物館であり、古代インド美術のコレクションは世界的にも有名という。
同博物館が所蔵する90もの仏像などを紹介する展覧会。
釈迦誕生以前の紀元前2世紀ごろのバールフット遺跡の出土品に始まり、釈迦の誕生以来のインド仏教美術の繁栄の様子をたどる。

連休の真っ最中に行ったが、館内は意外にも若い女性が多い。仏女(ぶつじょ)が増えているのか?

ギリシャ・ローマの影響を色濃く受けた仏像があれば、甘美な表情だったり、ほほえんでいたり、鼻の高い仏さま、ウエストの細い仏さまと、実にいろいろ。
菩薩像はだいたいが美人で、胸は豊満でなまめかしい。

仏陀をめぐるエピソードも興味深かった。
たとえば、仏伝「占相」は仏陀の生涯をわかりやすくレリーフで描いたものの一場面。
仏陀が悟りを開く前のゴータマ・シッダールタという名の王子だったころ、父の王はアシタ仙人に王子の将来を占わせた。するとアシタ仙人は手相を見るなり泣き出した。
「このお方はやがて悟りを開いて仏陀となられるでしょう。しかし、私は年老いて死も近く、仏陀尊い教えを聞くことが出来ないのが悲しい・・・。悲しい!」

小型のストゥーパ(仏塔)に描かれていたのは「獼猴奉蜜(みこうほうみつ)」と呼ばれるエピソード。
仏陀が弟子たちとともに歩いていると、一匹の猿が蜂蜜を取って来て仏陀に差し出した。すると仏陀は水で薄めて弟子たちとともに賞味した。猿は仏陀が蜂蜜を食べてくれたことに大喜びしたが、誤って穴に落ち死んでしまう。仏陀は猿を哀れんで人間に生まれ変わらせ、猿は幸せに過ごしたという。

しかし、なんといっても本展覧会での仏教美術としての最高傑作は、2世紀ごろにつくられたという「弥勒菩薩坐像」だろう。
ギリシャ・ローマの影響を受けているらしくて、堀の深い顔だちで、筋肉もたくましく、皮膚に張りついたような衣の表現など技術の巧みさに、ためいきがでるほどだった。