善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

リビア旅行記5

6日目、セブハを出発しガダメスに向かう。ガダメスはリビアの西端、アルジェリアとの国境近くにある。セブハからはおよそ900㎞も離れていて、車で1日中揺られていかなければならない。ま、今度は4WDではなく冷房の効いた大型バスだったので楽チンではあったが。

ガダメスは、交易ルートの要衝にあり、砂漠のオアシス都市として栄えた。町が築かれたのは紀元前8世紀ごろといわれ、以来、東から西から、さまざまな人々がここを行き交った。

泉がわくオアシスといっても、何しろ灼熱の砂漠地帯である。独特の建築手法で町がつくられた。全長7㎞の城壁で囲まれ、日干しレンガを使った2階建てもしくは3階建ての住宅が密集して建てられている。外側は壁から屋根から石灰で塗られ、町全体が白い。

窓は極めて小さく、家々はくっつくようにして建てられているので、街の中はとても暗い。懐中電灯なしには歩きづらい通路もあった。暑い日差しをなんとか遮ろうとする知恵なのだろう。まるで町全体が1つの建物のようになって、日差しからの防御を果たしている。
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日差しを遮るため通路は暗い

驚いたことには、この町では男と女は同じ道を通らない。男たちは、日差しが遮られた屋根の下のアーケード状の通路を通り、途中には屋根に覆われた小さな広場があちこちにあって(そこだけは屋根がなくオープンスカイ)、会合を開いたり、ひと休みしながらおしゃべりに興じることができる。

一方、女たちが歩くのは灼熱の屋上。家々の屋上は隣の家とつながっていて、下に降りることなく屋上を伝って歩く。
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白く塗られた屋根は女性専用の通路でもある

外から見る建物は質素な印象だが、一歩住宅の中に入ると、そこには豪華な世界が広がっていた。室内は、赤を基調にイスラムに特徴的なアラベスク模様(唐草模様)やさまざまな装飾で満たされ、あでやかだ。
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アラベスク模様があでやかな室内

室内に窓はなく、生活のメインの場である広いサロンの天井に唯一、天窓があり、そこから日差しが差し込む。閉め切っていてはさぞ暑いだろうと思うが、中にいると意外と涼しい。住宅の壁は日干しレンガを積み上げてわらを張り付け、石灰で塗り込んである。また、室内のところどころには風を通す穴も設けられている。土壁とか風の道とかの工夫が、暑さを和らげるのだろう。
室内のあちこちに鏡がはめ込まれているのも、装飾としての役割とともに、少しでも外からの光を室内に導き入れる工夫だと聞いた。

しかし、紀元前8世紀から栄えたガダメスに今は人は住んでいない。オアシスの水が涸れ、1983年に新市街ができると住民たちはそこへ移住した。旧市街となった町には、年に1度、お祭りなどのときに人が訪れるだけで、普段は無人の地となっている。

ガダメスでは伝統工芸としてベルベル伝統の刺繍をほどこした靴づくりが盛んで、その文様は見事で美しかった。