善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

佐藤雅美が面白い!

池波正太郎藤沢周平笹沢佐保あたりの作品をあらかた読んでしまってからは、時代小説を読まなくなってしまった。
唯一、愛読しているのが「大君の通貨」で直木賞をとった佐藤雅美の作品で、物書同心居眠り紋蔵シリーズ、八州廻り桑山十兵衛シリーズ、縮尻(しくじり)鏡三郎シリーズなどなど、本が出れば欠かさず読んでいる。

今読んでいるのは縮尻鏡三郎シリーズの最新刊「老いらくの恋」。これがことのほか面白い。佐藤サン、一皮むけたな、という感じである。

鏡三郎は、元幕府勘定方の将来有望な役人だったが、とある理由で御役を棒に振った、いわゆる縮尻御家人。かつての上司・三枝能登守が奔走してくれたおかげで、今は年五十両の給金で、八丁堀近くの大番屋(私設の仮牢兼調所)の元締におさまって、入牢者の親族などからの嘆願を聞いている。

今回の話。
鏡三郎の娘、知穂の隣に武部九郎右衛門という隠居した旗本が引っ越してきた。九郎右衛門は大坂での帳合米(ちょうあいまい)取引で大儲けし、莫大な財産を隠し持っていると噂され、その財産を狙って、有象無象が寄ってくる・・・。

1冊でひとつの話だが、1話完結になっていて、なるべく1日1話で終わりにしたいんだが、ついつい読み進んでしまう。あんまり早く読み終えたらもったいないとは思いつつ、やめられない・・・、そんな本に久々に出会えた。

この本によると、世界で初めて先物取引が行われたのは日本なんだそうだ。シカゴの商品取引所には、18世紀の中ごろ、日本の堂島(大阪)というところで世界で初めて先物取引が行われた、と掲示されているという。
「帳合米取引」とは、米商人たちの間で米の売買価格を収穫前にあらかじめ決める取引のこと。米の価格は天候、天災などの要因で常に変動する。そこで、帳合米取引によってあらかじめ米の売買価格を決めておくことで、思わぬ相場の乱高下がおきて損をするかもしれないという不安を取り除こうとした、リスクヘッジのための取引だった。
しかし、当然のことながら、米の値上がりを見越して買い付けておいたり、米の値下がりを見越して売り付けておくなど、取引を利用して利益を狙うものもいたわけで、そんな当時の様子が詳しく描かれている。

今回は特に、江戸の庶民の生活のにおいがよく出ているように思える。(まだ途中だが・・・)

早く仕事を終えて、続きを読もうっと。