善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

仁左衛門の見得のかっこよさ 六月大歌舞伎

歌舞伎座で「六月大歌舞伎」の夜の部を見る。
イメージ 1

演目は「鎌倉三代記(かまくらさんだいき)」「曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)」御所五郎蔵」「一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)」
出演は仁左衛門幸四郎、左団次、秀太郎歌六雀右衛門猿之助松緑ほか。

何といっても「御所五郎蔵」の仁左衛門
近くで見たくて1階の前から3番目の座席に座る。

江戸の風情を背景に男伊達の粋と意地の境地を描くのがこの話。河竹黙阿弥作だから七五調のセリフが満開。
仁左衛門はもともと関西の役者だが、江戸っ子の演技もさすがにうまい。
今回の趣向のひとつは上手にも花道をつくって両花道で役者がセリフをやりとりするところ。仁左衛門の御所五郎蔵は上手の花道から、左団次の星影土右衛門は下手の花道から、掛け合いのセリフを言い合う。
頭上をセリフが飛び交って、右見たり左見たり観客のわれわれも忙しい。

最後の立ち回りが圧巻。
ことに仁左衛門の見得のシーンはカッコイイ!のひとことしかない。
前の方に座ったので、花道七三のあたりで見得を切ると、照明に当たった仁左衛門の横からのシルエットがまたステキ。
オジサンがオジサンに惚れるヘンな気持ちになってしまう。

最後の最後、御所五郎蔵が傾城逢州(米吉)を誤って殺す場面は、逢州が真っ赤な衣装なら御所五郎蔵も真っ赤な衣装。カッと照明が客席を含めて会場全体を照らすと、唐紅の色彩がひときわ舞台に輝く。
まさに歌舞伎の醍醐味を味わった晩だった。

「鎌倉三代記」も「御所五郎蔵」もそれぞれ1時間程度の話におさめるため、かなりはしょった展開で見せ場だけの芝居だったが、たっぷり二幕五場でやったのが長谷川伸作の「一本刀土俵入」。
駒形茂兵衛は幸四郎、お蔦は猿之助
さすがにこういう役は幸四郎はうまい。
最後はついつい泣けてしまった。