善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

「花競忠臣顔見勢」&暁ビール

歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」を観劇。f:id:macchi105:20211113162459j:plain

江戸時代、役者は11月から翌年10月までの1年契約で舞台に立っていて、顔ぶれが11月に変わることから、新しい一座を観客に見せるのが顔見世興行で、その名残が今も残っていてなかなか華やかな演目がそろっているが、きのう観たのは第3部「花競忠臣顔見勢(はなくらべぎしのかおみせ)」。f:id:macchi105:20211113162522j:plain

忠臣蔵の名場面集といおうか、幸四郎猿之助を中心に、花形俳優の勢ぞろいによる赤穂浪士の物語。

四十七士が吉良邸に討ち入り、主君の仇を討ったのは12月14日。その討ち入り前の12月11日から、仇の首をとってエイエイオーと勝どきをあげた14日(正確には15日未明)までの4日間を、猿之助の演出により描いた忠臣蔵外伝。

 

全十一段からなる「仮名手本忠臣蔵」をベースに、河竹黙阿弥作の「四十七刻忠箭計」(しじゅうしちこくちゅうやどけい)」(大星由良之助(大石内蔵助)が討ち入り前に主君の妻顔世御前(葉泉院=瑤泉院)のもとを訪れて別れを告げる「南部坂雪の別れ」を中心とした演目)、渡辺霞亭作の「土屋主税」(宝井其角や大高源吾が登場し、「年の瀬や水の流れと人の身は」「明日待たるるその宝船」の句でも知られる忠臣蔵の外伝)などを散りばめて、ひとつの物語にしている。

 

仮名手本忠臣蔵」の大序で幕を開けると、小浪と力弥の縁組みに若狭之助が心を砕く「桃井館」、「徳利の別れ」を題材にした「稲瀬川々端」へと続く。

さらに、「南部坂雪の別れ」、討ち入り当日の吉良邸隣家の物語「土屋主税」を挟み込んで、クライマックスは十一段目より「高家奥庭泉水」「花水橋引揚げ」。

 

出演は、幸四郎猿之助を中心に花形俳優が勢ぞろい。

顔世御前後に葉泉院/大鷲文吾 尾上右近

河瀬六 歌之助

源蔵姉おさみ 笑也

高師直/戸田の局/河雲松柳亭 猿之助

晋其角 猿弥

大星由良之助 歌昇

井浪伴左衛門 錦吾

桃井若狭之助/清水大学 幸四郎

足利直義/お園 新悟

寺岡平右衛門 宗之助

大星力弥 鷹之資

塩冶判官/槌谷主税 隼人

龍田新左衛門 廣太郎

赤垣源蔵 中村福之助

小浪 米吉。

以上、五十音順。

 

あれだけ長い「忠臣蔵」(通しで上演すれば一日がかり)が手際よくまとまっていた。

特に今回の舞台で印象に残ったのが「南部坂雪の別れ」。昔の東映オールスターの「忠臣蔵」なら必ず出てくるエピソードだが、もちろん「仮名手本忠臣蔵」にはないから、こういうときでないと見られない。歌昇の大星由良之助がなかなかの好演だった。

由良之助は討入りの前日、南部坂の屋敷に暮らす葉泉院に会いに行く。あすの討入りを伝え連判状を渡すためだったが、屋敷内に吉良方の間者が潜入しているのを察知。討ち入りの遺志などさらさらなく、もはやお目にかかることもない、というと、「忠義の心を忘れたか」と怒った葉泉院は亡き夫の位牌で由良之助を打擲する。

降りしきる雪の中、今生の別れを背中で伝えて南部坂を由良之助が去っていったあと、置いていった旅日記が実は連判状であったことに気づく葉泉院・・・。

 

歌舞伎では出てこないが映画の忠臣蔵に出てくるシーンでもうひとつ忘れられないのが、大石内蔵助が江戸下向の際に「日野家用人・垣見五郎兵衛」という偽名を使って宿に泊まり、そこに本物の垣見五郎兵衛が現れて対面するシーン。

大石がニセモノとわかって隠密行動が露顕すれば討ち入りの計画は頓挫してしまう。どーする大石、というので、にらみ合う大石と垣見。セリフは一切なく、目と目で語る2人はやがて心を通わせ、ホンモノのほうが「実はニセモノは自分」と手をついて謝り、大石はそのまま垣見五郎兵衛として江戸に向かうのだった。

と、そんなことまで思い出してしまうきのうの舞台だった。

 

午後6時開演で、終演は8時半少し前。コロナ禍で劇場内での飲食ができないから、芝居のあとで銀座でイッパイやろうと店を探すが、時間制限解除のおかげか、ハナ金ということもあってどの店も客で満席。あるいはコロナ禍を脱しきれず閉店していたり、時間を早めて暖簾を下ろすところもあって、断られ続ける。

ようやく見つけたのが「暁タップス 銀座」というビアバー。f:id:macchi105:20211113162720j:plain

自然栽培の農家の果実や野菜を用いいて、オーガニックのビール造りをしようと世田谷で誕生した「暁ブルワリー」というビール醸造所の旗艦店一号店だそうで、それならとビールとつまみを堪能。

飲んだのは、まずは麦芽もホップもオーガニック100%、八幡平でつくったという「ドラゴンアイ・スカイ」。f:id:macchi105:20211113162806j:plain

エールビールの「暁ALE」。f:id:macchi105:20211113162829j:plain

苦みを際立たせたアルコール度数5・5%の「ドラゴンアイ・マグマ」。f:id:macchi105:20211113162854j:plain

つまみは、お通し。f:id:macchi105:20211113162929j:plain

柿とゴルゴンゾーラのハチミツのせ。f:id:macchi105:20211113162957j:plain

ソーセージの盛り合わせ。f:id:macchi105:20211113163028j:plain

舞茸とアナゴのアヒージョ。f:id:macchi105:20211113163052j:plain

店内の壁に描かれてるのはビール醸造用のタンクか。なかなかおしゃれ。f:id:macchi105:20211113163523j:plain

ご機嫌で帰還。