善福寺公園めぐり

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新芝翫襲名 十月大歌舞伎

歌舞伎座で「芸術祭十月大歌舞伎」夜の部を観る。
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中村橋之助改め八代目中村芝翫、それに橋之助の3人の子どもである中村国生改め四代目中村橋之助中村宗生改め三代目中村福之助中村宜生改め四代目中村歌之助の襲名披露公演だ。

八代目芝翫歌舞伎座での襲名披露公演は今月と来月の2カ月連続となる。つい最近同じように襲名披露公演をやった雀右衛門は1カ月だったから、テレビにもよく出ていた橋之助の人気のほどがわかる。

夜の部の演目は、「外郎売(ういろううり)」「襲名披露口上」「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)熊谷陣屋(くまがいじんや)」「藤娘」。
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祝幕をデザインしたのはデザイナーの佐藤可士和氏。
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襲名披露口上で祝幕が上がると、新芝翫ら4人を中心に幹部連中がならび、バックは全面金色の襖に龍の 墨絵が描かれていて、これも佐藤氏のデザインだとか。

本日の注目は「熊谷陣屋」。
熊谷直実芝翫、相模・魁春、藤の方・菊之助、白毫弥陀六・歌六源義経吉右衛門ほか。
芝翫は四代目芝翫の型で直実を演じたが、以前(たしか2012年)、国立劇場団十郎が演じていたときとは終わりのほうがかなり違っていた。

団十郎の型では、幕が閉まって団十郎のみが花道に残され、「十六年は一昔、アア夢だ、夢だ」とつぶやく。このセリフに直実の孤独感、無常観がジーンと染み渡ってきた。
ところが、きのうの直実は芝居の中で早々と「十六年は一昔。ああ夢だ」といってしまい、余韻があまり残らない。
義経と弥陀六のやりとりもエンエンと続いて、直実は大勢の中の1人という感じがした。
より現代の客にアピールしようとしたら芝翫型にこだわるより、より直実の気持ちをリアルに表現する団十郎の型でやったほうがよかったのになーと帰る道々思ったものだが、どうもそうもいかない事情もあるようだ。

先代の芝翫女形だった。ところが橋之助は立役で、新芝翫となってからも立役一本で行くだろう。
しかし、芝翫の歴史をたどるとみんな女役ばかりで、立役となると四代目までさかのぼらなくてはいけないという。
そうなると、芸の継承という意味から古色蒼然とした芝翫型で演じなければならなかった事情があるのだろう。

「藤娘」は玉三郎
妖艶な踊りも愛らしい若い娘の踊りも何でもできる人。しかも美しい。
うっとりするひととき。
長唄も心地よい。

ところで祝幕のあとにいつもの歌舞伎座の緞帳が下ろされたが、8月に亡くなった日本画家、松尾敏男氏の「朝光富士」だった。
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