善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

新しい音楽の探求「紅葉坂プロジェクト」+西荻窪・山下食堂

今年で70周年を迎える神奈川県立音楽堂が、クラシック音楽に一石を投じるとても意欲的な取り組みを行っていて、作品づくりに一般観客も参加できる、というので出かけていく。

 

神奈川県立音楽堂では、クラシック音楽の常識、さらには音楽の概念そのものをも転回するような新鮮なアイデアを、3人の企画委員の審査によって選ぶ新公募プログラム「紅葉坂プロジェクト」を2021年から行っていて、3回目となる今年も2組のアーティストが選ばれ、7月20日の本公演に向けての公開プレゼーション「ワークインプログレス」が23日、開催された。モニター観客大募集というので応募し、公開プレゼンに参加した。

 

第1回のときの企画委員長は、神奈川県立音楽堂を運営する神奈川芸術文化財団の芸術総監督・一柳慧氏がつとめた。彼が牽引する新しい音楽創造のプロジェクトの感が強かったが、2022年に死去。そのあとを次いで、今年の企画委員は沼野雄司(委員長)、濱田芳通、湯山玲子の3氏。

公開プレゼーションでは、2組のアーティストによる企画案のプレゼンテーションと演奏、企画委員によるコメント、モニターとして参加した観客による質疑応答があり、モニター観客はあとでモニターシートに思ったことを記入し、本公演に向けての参考にしてもらう。

2組のアーティストは、企画委員からのコメントやモニター参加者からの意見を聞いて、さらに作品をブラッシュアップしていく。

つまり、アーティストと企画委員、聴衆によるコミュニケーションによりひとつの作品が仕上がっていくというわけで、新しい試みによる音楽づくりといえるもの。

 

今回、企画が採択されたのは、小倉美春&上條晃による「おんがくが『ぬ』とであふとき」、それにマキシマム(磯部英彬、星谷丈生)「マキシマム合唱団」。

小倉美春&上條晃の2人は古代語としての「ぬ」に着目して、この「ぬ」が音楽と出会うときを作曲で表現。

2人によれば、私たちひとりひとりは違う「ぬ」を持ち、それはどこか切迫した緊張を持っていて、それはゆっくりとした大きな渦を描いている。「ぬ」の記憶に入り、「ぬ」の息づかいを聴き、たくさんの「ぬ」を音楽をとおして生きてみる、それが企画のねらいという。

なかなか斬新なアイデアだ。

小倉美春さんはピアニストで作曲家、上條晃さんは歌人で高校の国語科教師。プレゼンでは「ぬ」という言葉の解釈がおもしろかったが、プレゼンを聞いていて、もともと「ぬ」というのは文字が先にあるのではなく「ぬ」という音としての言葉が先にあるのだから、音の響きをいかに表現するかも大事だと思うのだが、はたしてどんな完成作品になるのだろうか?

2組目のマキシマムは、作曲家で楽器製作者である磯部英彬さんが主催するエレクトロニクスとアコースティック楽器による可能性を追究する団体。そのマキシマムが開発したさまざまな創作楽器を操りながら演奏するエレクトロニクスと生楽器が融合した合唱団がマキシマム電子合唱団で、合唱メンバーは楽器演奏のエキスパートたちで構成され、それぞれが歌と楽器を交互に演奏し、発声法についても演奏者それぞれの声の個性を重視した発声や、演奏者から電子音などが出るウェアラブルセンサースピーカー、特殊音律調整装置などのエレクトロニクス創作楽器を用いることで新しい表現方法を探求するという。

今回のプレゼンでは合唱団メンバーとしてフルートの今井貴子さん、打楽器の高瀬真吾さんが参加。

磯部さんという人はいろいろ新しい楽器を発明したりしている人らしく、作曲家の星谷さんと一緒に開発したのが「Isobe‐Raol」。移動式のスピーカーで、空中を移動するタイプ、地上を移動するタイプがあり、プレゼンでも紹介されていたが、音楽表現の新しい可能性を感じさせるものだった。

ほかにも2人のコラボレーションで開発されたものとして、MIDI鍵盤から様々な電気機器をコントロールすることができる鍵盤楽器とか、指向性のスピーカーなどもあるという。

今まで聴いたことのない音の響きで、本公演での完成版が楽しみになるプレゼンだった。

 

横浜の桜木町まで出かけていったので帰りは夜になり、西荻窪駅南口近くの「山下食堂」でイッパイ。

たまに行くビストロで、気に入っている店。

ハートランドビールのあとはワイン。

チョイスしたのはイタリア・シチリアのワインで「BORGO SELENE」の赤。

とても飲みやすいワインだった。

 

料理はまず、イチゴとマスカルポーネと生ハム

ビンチョウマグロのマリネとネギコンフィ フルーツトマトのソース

鰯と葉ニンニク、ナッツのアーリオオーリオ

豚肩ロースのロースト フキノトウのバーニャカウダソース

昼すぎから降っていた雨もやんでいて、楽しく帰宅。