チリの赤ワイン「エスクード・ロホ・レゼルヴァ・カベルネ・ソーヴィニヨン(ESCUDO ROJO RESERVA CABERNET SAUVIGNON)2021」
(写真はこのあと牛のサーロインステーキ)
フランス・ボルドーのメドック格付け第一級、シャトー・ムートンを手がけるバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドがチリでつくる「エスクード・ロホ・レゼルヴァ」シリーズの1本。
フランスで培われた技術をもとにチリで育まれたカベルネ・ソーヴィニヨン100%の赤ワイン。
ワインの友で観たのは、民放のCSで放送していたイギリス・アメリカ合作の映画「フル・モンティ」。
1997年の作品。
原題「THE FULL MONTY」
監督ピーター・カッタネオ、出演ロバート・カーライル、マーク・アディ、トム・ウィルキンソン、スティーヴ・ヒューイソン、ポール・バーバー、ヒューゴ・スピアーほか。
失業中の男たちが男性ストリップに挑む姿をユーモアたっぷりに描いたヒューマンコメディ。
イギリス北部の街シェフィールドはかつて鉄鋼業で栄えていたが、現在は不況のあおりを受け失業者で溢れかえっていた。その1人、ガズは養育費を払えず元妻に息子を奪われそうになっている。そんなある日、男性ストリップショーで熱狂する女性たちを目撃した彼は、自分もストリップでひと儲けしようと思いつく。一癖も二癖もある寄せ集めのメンバーたちとともに猛特訓を開始するが・・・。
フル・モンティとは英語のスラングで「フルチン、スッポンポン」、つまり「全裸」のこと。
鉄工所を解雇され失業中の金欠中年男6人が、窮余の策としてストリップショーで全裸になる物語だが、彼らのプロフィールをみると、なるほど「フル・モンティ」になるしかないかも、と妙に納得。
ガズ(ロバート・カーライル)は離婚した元妻から単独親権を通告される。息子の共同親権を確保するには養育費として700ポンドを支払わなければならないが、そんな金はない。
デイヴ(マーク・アディ)はガズの親友でデブ。自分の体型と失業が原因ですっかり自信喪失状態。不能のため妻との夜の生活にも応じられない。
ジェラルド(トム・ウィルキンソン)は鉄工所時代はガズたちの上司。社交ダンスの素養があったため無理やり仲間に入れさせられるが、解雇を妻に打ち明けられないでいる。
ロンパー(スティーヴ・ヒューイソン)は深夜勤務の警備員の職を得るが、友人もなく監視モニターとの睨めっこの仕事の日々にすっかり気がめいってしまい、排ガス自殺しようとしてガズらに助けられる。
ホース(ポール・ハーバー)は老年の黒人。ガズたちが開いたオーディションで得意のブレイクダンスを披露して合格。ただし年のため少し脚元がおぼつかないときも。
ガイ(ヒューゴ・スピアー)はオーディションでのダンスはNGだったが、自慢のイチモツの立派さで見事合格。やがてロンパーといい仲になる。
この作品は評判になって2000年にはブロードウェイでミュージカル化され、日本でも上演されている。
映画では、ラストで6人の男たちが舞台の上でスッポンポンになって終わる。映画は後ろ姿だったので何とかなったけど、実演の舞台ではどうしたんだろうか?
舞台で全裸になっての演技となると、日本だと刑法の公然わいせつ罪、あるいは軽犯罪法違反に問われる可能性もあるが、果たして・・・?
ブロードウェイも日本の舞台も、見てないからわからない。
「フル・モンティ」には「スッポンポン」のほかにも、「すべてのもの、一切合切、何もかも」といった意味があるという。
この作品の主題は、「全裸」よりも、本当はむしろこちらのほうにあるかもしれない。
登場人物たちが失業して追い詰められ、すべてを失おうとしているとき、彼らが大事にしようとしたのは「息子への愛」「妻への愛」「友人への愛」「男同士の愛」だった。たとえ一切合切を失ったとしても、大事なのは「愛なんだよ」といっているようにも思えた。
ついでにその前に観た映画。
民放のCSで放送していた韓国映画「反則王」。
2000年製作。
監督キム・ジウン、出演ソン・ガンホ、チャン・ジニョン、パク・サンミョン、チャン・ハンソンほか。
昼はダメダメ銀行員、夜は反則技を得意とする覆面レスラーの活躍を描くプロレスアクションコメディ。
銀行員のイム・デホ(ソン・ガンホ)は冴えない独身男性。職場では遅刻常習と成績不振で叱責され、上司の副支店長からプロレス技のヘッドロックをかけられては屈辱感を味わっていた。
体力に自信のないデホは、せめて上司のヘッドロックを外したいというだけの気持ちでさびれたプロレスジムを訪れるが、ジムの館長から追い払われてしまう。ところが、ジムの館長が少年時代に憧れた伝説の覆面レスラー「ウルトラタイガーマスク」と知ると、俄然やる気になって入門を認めてもらう。
はじめは彼を拒絶していたジムの館長も、反則レスラーが必要だというプロモーターからの要求を断れず、デホを反則専門のレスラーに仕立て上げることにする。やがて本気でトレーニングを重ねるようになったデホは・・・。
今や韓国を代表する名優となったソン・ガンホの初主演作。
手に汗握るプロレスシーンが臨場感にあふれていて迫力あるが、ソン・ガンホはこのとき33歳。2カ月間、1日6時間のトレーニングを積んで撮影に臨んだんだとか。
映画の最後、さんざんヘッドロックでやっつけられた銀行の上司に、習得したプロレス技でやり返すかと思ったら、ずっこけてしまってジ・エンド。
現実の世界はそう甘いものじゃないよ、といってるみたいで、なかなか味な終わり方だった。
1958年の作品。
原題「COWBOY」
監督デルマー・デイビス、出演グレン・フォード、ジャック・レモン、アンナ・カシュフィ、ブライアン・ドンレヴィほか。
牛の大群を輸送する旅を終えて、東部にある定宿のホテルに着いたカウボーイのトム(グレン・フォード)は、フロント係として働くフランク(ジャック・レモン)から牧童になりたいといわれる。メキシコの大牧場主の娘と恋仲になっていたフランクは、彼女を追うためトムに雇ってもらおうと考えたのだった。
はじめは断ったトムだったが、フランクからギャンブルの金を借りたため、仕方なく彼を雇い、メキシコの牧場に向かう旅立つ。
意気揚々とカウボーイの仲間入りをしたフランクだったが、やがて牛追いが想像とはまったく違うことを思い知らされる。しかも、牧場に着いてみると、恋仲と思っていた娘はすでに別の男と結婚していて、ショックを受けるフランク。
彼は納得がいかないまま旅を続けるのだが・・・。
早撃ちのガンマンが出てくるわけではなく、派手な撃ち合いもない異色の西部劇。
カウボーイの世界を知り尽くした男に鍛えられる青年の成長を描いた骨太のドラマ。
この映画のときジャック・レモンは33歳。映画デビューから4年後の作品だ。彼は1955年のヘンリー・フォンダ主演の「ミスタア・ロバーツ」で軽快なしゃべりと軽い身のこなしの演技でアカデミー賞助演男優賞を受賞していて、当初はコメディアンとして注目されたそうだが、本作のようなシリアスな作品にも出演している。それのがのちの「アパートの鍵貸します」や「酒とバラの日々」などの作品にもつながっていったのだろう。
何といっても渋くて存在感があるのがカウボーイを演じるグレン・フォード。
同じデルマー・デイビス監督の「去り行く男」(1956年)「決断の3時10分」(1957年)に続く作品だが、彼が演じるカウボーイは、束縛されることなく、自由な生き方をする人間として描かれている。
実はこの映画の脚本には、“赤狩り”でハリウッドから追放されていたダルトン・トランボも参加していたが、彼の名前は伏せられて映画が公開されている。
トランボは「ローマの休日」(1952年)のときも原案・脚本は彼だったのに、追及を避けるため他人の名義を使わなければならなかった。「スパルタカス」(1960年)でカーク・ダグラスの決断により脚本家として名前が堂々とスクリーンにクレジットされるまで日陰の身であり、それでも映画への情熱を失わず、他人名義やノンクレジットで作品を世に送り続けた。
トランボは、束縛のない自由な生き方をするカウボーイに自分の姿を重ね合わせたのかもしれない。