善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「トプカピ」

スペインの赤ワイン「カベルネ・ソーヴィニヨン・メルロ(CABERNET SAUVIGNON MERLOT)2019」

(写真はこのあと牛のサーロインステーキ)

ワイナリーはスペイン北部のピレネー山脈の麓、フランスとの国境に近いスペイン北東部アラゴン州ソモンターノのエナーテ。

エナーテはアートとワインのコラボレーションにも熱心で、ラベルに描かれているのはスペイン人アーティストの作品。同じ絵柄のラベルの銘柄は1つもなく、すべて異なったアートをあしらっているのだとか。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたアメリカ映画「トプカピ」。

1964年の作品。

原題「TOPKAPI

監督ジュールス・ダッシン、出演メリナ・メルクーリ、ピーター・ユスチノフ、マクシミリアン・シェル、ロバート・モーリーほか。

 

トルコのかつての帝国時代、スルタン(王)の居城だったイスタンブールにあるトプカプ宮殿。そこに飾られているエメラルド入り短剣をめぐるコメディ・タッチの泥棒物語。

邦題は「トプカピ」。英語読みするとそう聞こえるが、今はトルコ語の発音に近い「トプカプ」と呼ばれる。

 

美しい女泥棒エリザベス(メリナ・メルクーリ)は、トプカプ宮殿の宝物殿に陳列されているエメラルド入り短剣の強奪を計画。愛人のベテラン泥棒ウォルター(マクシミリアン・シェル)とともに計画を練り、仲間を集める。

2人は観光客を装ってギリシャに行き、トルコまで武器を運搬させるためイギリス人ガイドのアーサー・シンプソン(ピーター・ユスチノフ)を雇う。そうとは知らぬシンプソンは車を運転して指定された目的地に向かうが、国境の検問所で武器を発見されてしまう。しかし、当局はシンプソンを逮捕せず、スパイとして働かせることにする。

エリザベス一味と合流したシンプソンは、泥棒の片棒を担がされる一方、警察のスパイとしても働く破目に。やがて一味はまんまとトプカプ宮殿に忍び込み、ついに短剣を手にするが・・・。

 

監督のジュールス・ダッシンは第二次世界大戦後、社会派映画の監督としてハリウッドで活躍していたが、“赤狩り”の嵐に巻き込まれてハリウッドを離れ、ヨーロッパに渡る。1960年の「日曜はだめよ」で再び脚光を浴び、この映画で主役を演じたメリナ・メルクーリと再コンビを組んでつくったのが本作。

 

当時のイスタンブールの様子が克明に生き生きと描かれ、トルコ相撲(体に油を塗り込んで行うトルコの国技、オイルレスリング)の熱気あふれる試合などもたっぷり描かれているが、圧巻はトプカプ宮殿に侵入した泥棒たちの描写。

宮殿の屋根の上を忍び足で伝っていくのだが、男たちの背後にはボスポラス海峡が見えて、おそらくスタジオでの撮影ではなく現地でのロケに違いない。よくも撮影を許可したと思うのだが、屋根から落ちそうになったりして、スリル満点で手に汗を握る。

何しろ今みたいにCGなんかないから、役者たちはトム・クルーズも顔負けの体当たり演技だ。

侵入した泥棒チームの1人の“軽業師”が宮殿宝物殿の天井からロープで吊り下げられてエメラルド入り短剣を盗む場面があるが、このシーンのアイデアをそっくりパクったのがトム・クルーズ主演の「ミッション・インポッシブル」(1996年)で、本作こそ「元祖・天井からの宙吊り作戦」。

何しろ宝物殿の警戒は厳重を極め、床を踏めば警報が作動する。ピンポン玉を落としただけで警報が鳴る。ではどうするかというと、天井から垂直にロープで降りていって、床に足をつけずに宙吊りのまま巨大ガラスケースの鍵を開けてケースを空中に引きあげ、中にある等身大の人形が帯びた短剣をレプリカと取り換えてから再びケースをかぶせて施錠し、何事もなかったように屋根に戻って宮殿を去る。

これとそっくりなことを「ミッション・インポッシブル」でトム・クルーズはやっている。彼も体を張った演技で知られる役者だが、彼がマネする30年以上前に見事なお手本を示しちゃっているのだから、昔の役者はスゴイ。

 

ちなみにトプカプ宮殿の秘宝「トプカプのエメラルド入り短剣」(Topkapi Dagger)は、巨大なエメラルド3個が柄一杯に飾られ、さやには大小様々なダイヤモンド、中央部にはかごに盛られた果物のエナメル七宝細密画が施されていて、柄頭には当時でも珍しい小型ロンドン製巻き時計がはめ込まれている。

この短剣はオスマン帝国のスルタン・マフムート一世(在位1730~1754年)がイラン・アフシャール朝の君主ナディール・シャーに贈呈するために作らせたものといわれている。しかし、イランで反乱が起こってナディール・シャーが殺害されてしまったため、オスマンの大使は来た道を引き返し、短剣はトプカプ宮殿の宝物殿に納められることになったんだとか。