善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「おばあちゃんの家」ほか

イタリア・トスカーナの赤ワイン「サンタ・クリスティーナ・ロッソ(SANTA CRISTINA ROSSO)2020」

イタリアワインの名門アンティノリが手がける赤ワイン。

サンジョヴェーゼ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、シラーをブレンド

1946年のリリース以来、70年以上飲まれ続けているロングセラーワインという。

たしかに親しみやすい味わい。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していた韓国映画「おばあちゃんの家」。

2002年の映画。

監督イ・ジョンヒャン、出演ミン・ギョンフン、キム・ウルブン、イ・ジョンヒャン、ユ・スンホほか。

 

わがままに育てられたソウル生まれの孫と、山村で素朴な生活を送る祖母のひと夏の交流をユーモアあふれる視点で描く。

サンウ(ユ・スンホ)は母親と2人でソウルに暮らす7歳の少年。夏のある日、サンウは失業中の母が新しい仕事を見つけるまでの間、今まで会ったこともない田舎のおばあちゃん(キム・ウルブン)の家へ預けられることになる。

おばあちゃんの家はかなり辺鄙な山の中にある。隣近所もかなり離れていて、腰の曲がったおばあちゃんが一人で住んでいる。都会暮らしに慣れてしまっているサンウにとってそこでの生活はあまりにも退屈だった。

おばあちゃんは話すことも読み書きもできないため、サンウは彼女をバカにし、何かと不満をぶちまける始末。それでもおばあちゃんは、決してサンウを叱ることはなく、彼の願いを叶えてあげようと懸命だった・・・。

 

韓国・忠清北道永同でロケしたというが、忠清北道は韓国のほぼ中央に位置し、その南端にあるのが永同というところ。町にまで出かけていく交通手段は1日に何本しかないバスというような不便なところで、かなりの田舎のようだ。

そこでの登場人物は、子役のユ・スンホ以外はすべてロケ地に住む素人をキャスティングしたという。おばあちゃん役のキム・ウルブンも実際に山奥の村で農業をしていた77歳の住民で、2日間にわたって説得した結果、出演をOKしてもらえたという。

このときのことをイ・ジョンヒャン監督はマスコミとのインタビューの中でこう語っている。

「ロケ地の忠清南道永同を見て山から降りた日に、遠くを歩くキム・ウルブンハルモニを見た瞬間『あの人だ!』と思った。ハルモニが『私はできない』というのを説得して出演を承諾してもらった。ハルモニに対する思い入れが強くなって、6カ月の撮影が終了して村を去る日、村人とスタッフ全員が涙なしではいられなかった。私もハルモニと抱き合って号泣した。ハルモニが『私の生涯の中で一番幸せな時間だった』といわれてうれしかった」

監督はまた、別のところでこんなことも語っている。

映画に登場するわがままな現代っ子のサンウは「自分を含むわれわれ全員の姿」であり、どんなにわがままをいっても、すべてを惜しみなく与えてくれるおばあちゃんの姿は「自然」を投影している。

なるほど、自然は何もしないでも、そのままでいるからこそ自然なのだ。おばあちゃんは演じたのではなく、ただあるがままにいただけなのだ。それがわれわれに感動的な演技として胸に迫ってくる。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたアメリカ映画「ビューティフル・ボーイ」。

2018年の作品。

監督フェリックス・バン・ヒュルーニンゲン、出演スティーブ・カレル、ティモシー・キャラメほか。

 

成績優秀でスポーツ万能というので将来を期待されていたニック(ティモシー・キャラメ)。しかし、いつも優等生であることを求められる重圧に耐えかねた彼は、あるときふとドラッグに手を出して、いつしかその深みにはまり、泥沼地獄からなんとか抜け出そうと必死に願いながらも、更生施設への入所とそこからの脱走を繰り返していた。

フリーの音楽ライターで、ニックの父親のデヴィッド(スティーブ・カレル)は、息子が立ち直ることを信じて懸命に彼を支え続けるが・・・。

 

実話にもとづく映画で、ニック本人と父親デヴィットがそれぞれ書いた2冊の回顧録がベースとなっているという。

ニックがいろんな薬物を試して、ついに薬物中毒から抜け出せないほどにハマってしまったのはクリスタル・メスといわれる薬物だが、この薬物の成分はメタンフェタミンといって、依存性と毒性が極めて高い覚せい剤のことだ。身も心も破壊して再生するのが困難といわれるほどで、史上最悪のドラッグの1つだとか。

実はこのメタンフェタミンは日本では商品名「ヒロポン」として販売されていて、「疲労がポンと取れる」というのでヒロポンとネーミングされたといわれるが、そもそもこの薬剤を開発したのは日本の薬学者だった。

 

ヒロポンは戦争と深い結びつきがある。

覚せい剤という通り脳の覚醒を促すものであり、疲労感や眠気を吹き飛ばして集中力を高める働きがあるというので、第2次世界大戦時には連合国と枢軸国の双方の軍隊で士気向上や疲労回復を目的に使われた。

日本では出撃前の特攻隊員にもヒロポンが与えられていたという。

兵士だけではなく、作業能率を上げて昼夜ぶっとおしで働かせるために軍需工場でも大量に用いられ、勤労動員された学徒たちも半強制的に飲まされたといわれる。

恐怖心を薄れさせ、正常な判断力も失わせて、命令に従順な、疲れ知らず・命知らずの人間にしてしまうのが覚せい剤ヒロポン

そんな怖い覚せい剤は現在の日本では使用禁止かというと、「限定的な医療・研究用途での使用」は許されていて、自衛隊員は特例で覚せい剤の使用が可能なのだという。

自衛隊法には「麻薬及び向精神薬取締法等の特例」という条項(自衛隊法第115条)があり、「自衛隊の部隊又は補給処で政令で定めるものは・・・麻薬又は医薬品である覚せい剤原料を譲り受け、及び所持することができる」となっている。

有事の際に必要ということなのだろうが、がんの痛みの治療にも使われている医療用麻薬ならまだしも、なぜ覚せい剤までも?と思ってしまう。