善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「山の郵便配達」他

アルゼンチンの赤ワイン「レゼルヴァ・マルベック(RESERVA MALBEC)2019」f:id:macchi105:20210910163008j:plain

アルゼンチン老舗ワイナリー、ボデガ・ノートンの赤ワイン。

レゼルヴァ・マルベックに使用されるブドウが育つのはアルゼンチン国内でも最もマルベックの生産量が多いメンドーサ州アンデス山脈の麓の標高1,100mという高地だとか。

飲みやすいワイン。

 

ワインの友で観たのは民放のBSで放送していた中国映画「山の郵便配達」。

1999年の作品。

原題「那山 那人 那狗」

監督・霍建起、出演・滕汝駿、劉燁ほか。

 

80年代初頭の中国・湖南省西部の山岳地帯。長年、重い郵便物を詰めたリュックを背負い、120㎞の山道を2泊3日かけて徒歩で集配してきた父親。自分の仕事に誇りを持ち働いてきたが、足を痛めたため退職することになり、仕事を息子に引き継がせるため息子や愛犬の“次男坊”とともに最後の郵便配達へと出発する。

道中、父は多くを語らず、黙々と仕事をこなす中で、道筋や集配の手順、そしてこの仕事の責任の重さと誇りを息子に伝えていく。幼いころから父は仕事で家を空けることが多く、近寄りがたくて「父さん」と呼べなかった息子も、徐々に父への思いを新たにしていく・・・。

 

原題の「那山 那人 那狗」とは、直訳すると「あの山 あの人 あの犬」という意味だという。

わだかまりがあった父と子とが、山の郵便配達という仕事を共にする中で、やがて心を通わせていく。特に“事件”が起きるわけでもなく、豊かな自然の中を黙々と歩き続けるだけの映画だが、言葉のない、美しい映像が観るものの心を洗ってくれる。

 

同時に、郵便配達という仕事の原点を見る思いがした。

もともと郵便は情報伝達に欠かせないものだった。人間社会を成り立たせているものといえばコミュニケーションであり、そのためには互いを結ぶ交通・通信といった伝達手段が必須だ。

相手が近くにいれば互いに言葉を交わすことでコミュニケーションはとれるが、遠くにいる場合、電話やネットが発達している現代ならいざ知らず、昔にあっては郵便によって伝え合うしか方法はなかった。そして郵便配達は、単に手紙やハガキを運ぶだけではせなく、都会の新しい文化や話題を届ける役もしている。

だから人々は郵便配達がやってくるのを待ちわびていて、ときとして村人が総出で出迎えたりするのだ。

なぜ船やバスを使ったりして配達しないのか、その方が速くて便利なのに、という息子の問いに、父親は首を振ってこう答える。

「自分の足で歩いて届ける方が確実で、間違いないからだよ」

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していた韓国映画「君が描く光」。

2016年の作品。

原題は韓国語で「ケチュンばあちゃん」という意味らしい。

監督チャン、出演ユン・ヨジョン、キム・ゴウンほか。

 

済州島のベテラン海女ケチュン(ユン・ヨジョン)は孫娘のヘジと幸せな生活を送っていたが、市場に買い物に行ったとき、うっかり手を離したすきにヘジがいなくなってしまう。八方手を尽くしたが見つからず、やがて12年の年月が流れる。

ある日突然ヘジ(キム・ゴウン)が帰ってきて、大喜びするケチュン。ヘジは高校に通うようになり、彼女の美術の才能に気づいた美術教師から指導を受けるが、教師はヘジに「影より光を見ろ」とアドバイスする。

朝から晩まで、ただ孫娘を思うだけのケチュンとは違って、成長したヘジは過去のことを語らず、どこか様子がおかしい。12年ぶりに帰って来たヘジの本当の理由は何なのか?ケチュンと離れていた12年の間に何があったのか・・・?

 

「ミナリ」でも祖母役をしていたユン・ヨジョンと、先日テレビで観た「奴が嘲笑う」では検事役をしていたキム・ゴウンの共演。

海よりも深い祖母の愛にホロリとさせられる映画だった。

 

 

民放のBSで放送していたフランス・イタリア合作の映画「ボルサリーノ」。

1970年の作品。

監督ジャック・ドレー、出演ジャン=ポール・ベルモンドアラン・ドロンほか。

 

ギャングがうごめく1930年代のフランス・マルセイユ。刑期を終えて出所したシフレディ(アラン・ドロン)は、自分の女であるローラをめぐってカペラ(ジャン=ポール・ベルモンド)という男と殴り合いになるが、そのケンカ沙汰をきっかけに2人の間には奇妙な友情が芽生える。ギャングとしての野望を達成するため、シフレディとカペラは暗黒街を牛耳る大物たちを手玉に取り、やがてマルセイユを手中に収めていくが・・・。

 

製作はアラン・ドロン。2人は2、3歳違いでベルモンドのほうが年上だが、ドロンの最初の代表作「太陽がいっぱい」は1960年、ベルモンドの「勝手にしやがれ」も1960年で、ともにほぼ同じスタートといえる。しかも、かたや美男俳優、かたや演技派俳優と対照的で、それゆえに当時フランス映画界で人気を二分していた2人の初共演作品として話題になったのが本作。

しかし、ドロンのデビュー作である「女が事件にからむ時」(1957年)にベルモンドは端役で出演していて、翌年の「黙って抱いて」(1958年)でも2人は共演している。けっこう若いときから互いに切磋琢磨していたようだ。

ベルモンドは今年9月、88歳で亡くなった。追悼する国家式典が行われ、マクロン大統領も出席してフランス国民に愛されたスターの死を悼んだ。

 

映画のテーマ曲も有名になったが、あらためて映画を見ると、あれだけ繰り返し同じメロディーが流れれば、いやでも覚えてしまう。

 

ちなみに題名の「ボルサリーノ」とはイタリアの高級帽子メーカのブランド名。ただのチンピラだった2人が暗黒街を牛耳るようになり、成功者のあかしであるボルサリーノ(それで麻生大臣もご愛用なのか)をかぶるようになる物語、というのでつけられた題名のようだ。