イタリアの赤ワイン「モンテプルチアーノ・ダブルッツォ(MONTEPULCIANO DABRUZZO)2018」
(写真はこのあとシシカバブ)
イタリア中央部アドリア海沿岸に位置するアブルッツォ州でワインづくりを行うワイナリー、グラン・サッソの赤ワイン
グラン・サッソという名前はイタリア半島の中央にそびえるアペニン山脈最高峰の山に因んでつけられたという。
アブルッツォ州は山から僅か数キロほどの場所にアドリア海が広がり、山の麓は温暖ながら昼夜の温度差が大きくブドウの栽培に理想的な気候。この地方では、古くから栽培されているモンテプルチアーノ種を使ってワインづくりが行われているという。
飲むうちにまろやかな味わいに。
ワインの友で観たのはNHKBSで放送していたアメリカ映画「ロープ」。
1948年の作品。
監督アルフレッド・ヒッチコック、出演ジェームズ・スチュワート、ジョン・ドール、ファーリー・グレンジャーほか。
ヒッチコックの映画はあらかた見たと思っていたが、まだ未見の作品だった。
ヒッチコック初のカラー作品。実話を元にした舞台劇を映画化したサスペンススリラー。
常に斬新な演出に挑むヒッチコックらしく、実際の物語の進行と上映する映画の進行を一致させようと全編をワンシーンで撮影している。
実際には背中の黒い背広や蓋なんかを大写しにしてつなげているが、長回しの映像が延々と続き、役者は(もちろんスタッフも)大変だっただろうが、まるで舞台劇を間近で見ているみたい。緊迫感がハンパなく伝わってきて、息を詰めて見てる感じでワインを楽しむどころじゃなくなり、早々と飲み終えてからジックリと見る。
摩天楼を見渡せるニューヨークのアパートの一室で、大学を出たばかりの青年フィリップ(ファーリー・グレンジャー)とブランドン(ジョン・ドール)は同級生をロープで絞殺し、死体を衣装箱に入れる。
殺害の動機はなく、自分たちが他者より優れていることを証明しようとするニーチェの理論(超人思想)を実践したにすぎなかった。
2人はさらなるスリルを求め、被害者の父や恋人、恋仇、伯母、そして恩師である大学教授(ジェームズ・スチュワート)を部屋に招き、死体が入っている衣装箱の上に料理を並べて晩餐会を開く。
犯した罪の恐ろしさに次第に冷静さを失っていくフィリップと、大胆にも死体を見せたい衝動に駆られるブランドンだったが・・・。
ニーチェは、「ツァラトゥストラはかく語りき」の中で、人間のあるべき姿を「超人」と呼んだ。ちなみに「ツァラトゥストラ」とはゾロアスター教の開祖ゾロアスターのドイツ語読み。ニーチェはゾロアスターの言行に託して自分の考えを語っている。
しかし、ニーチェのいう「超人」とは決してスーパーマンを意味しているわけではないはずだが、映画で2人の若者は自分たちが他者を超越した人間と勘違いし、殺人遊戯に走ってしまったのだ。
映画の最後で大学教授は、人間には上も下もなくすべて対等であり、だれにも他人を殺す権利などないと諭し、窓を開けて犯人たちが持っていた拳銃で夜空に向けて三発発射する。
するとアパートのほかの住民がびっくりして警察に通報したのだろう、やがてパトカーのサイレンの音と人々の声が聞こえてくる。
誤った虚構の世界を打ち砕く現実世界のざわめき。
印象的なラストシーンだった。