善福寺公園めぐり

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イアン・マッケランの「リア王」

池袋駅西口ルミネ8階にあるシネ・リーブル池袋でイアン・マッケラン主演の「リア王」を観る。

「ナショナル・シアター・ライブ」の「アンコール冬祭り2020」で上映されたもの。

2018年7月11日から11月3日まで、ロンドンのウエストエンドにあるデューク・オブ・ヨークス劇場で上演されたジョナサン・マンビイ演出「リア王」の映像収録版。

先日観たやはり「ナショナル・シアター・ライブ」の「シラノ・ド・ベルジュラック」がとてもよかったものだから、「ロード・オブ・ザ・リング」でガンダルフを演じたイアン・マッケランリア王をやるというので出かけていく。

上演時間は220分(途中20分間の休憩)。収録日は2018年9月27日という。

 

リア王」はシェイクスピアの四大悲劇の一つ。退位にあたり3人の娘の愛情を試した老王リア。甘言を弄した長女と次女には領地を与え、素直なもの言いをした三女を怒りのあまり追放してしまう。しかし、信じて頼った長女と次女に裏切られ、流浪の身となって荒野をさまよう。やがて三女の真心を知り、フランス王妃となった彼女の力を借りて2人の軍勢と戦うも敗れ、三女は処刑。狂乱と悲嘆のうちにリア王も没するという物語。

 

映像が始まる前にマッケランのインタビューがあり、300人程度の観客席しかない小劇場での上演をあえて選んだこと、その理由として、観客の顔をすべて見えるような距離の近さをあげていて、観客が毎日変わると演技も毎日変わるというようなことを言っていた。

また、リア王は80歳をすぎた老いた王であり、やがて狂気に走ってしまうのは老いゆえともいえるが、マッケランは、自分の年齢が80近くになんなんとしていることが役作りにプラスになっているというようなことも言っていた(実際マッケランは1939年生まれで、今年81歳)。

 

たしか劇が始まると客席のすぐそばが舞台で、中央には花道が設けられている。

演出もかなり変わっていて、劇で重要な役割を果たすリアに忠実なケント公は女性に置き換えられ、リアとともに追放されたあとは変装して男として登場する。

また、やはり悲劇的運命をたどる三女のコーデリアは黒人の女優で、たしか彼女は「シラノ・ド・ベルジュラック」でもロクサーヌ役をしていた。

荒野をさまよう場面では、本水を使った雨のシーンで、マッケランはずぶ濡れの演技。これを毎日やるんだから、たいした役者根性だ。

 

今回、「リア王」を観て思ったのは、シェイクスピアが描く世界は決して400年前の彼が生きた時代の話ではなく、現代に通じるテーマを描いているんだなということだった。

劇の最初の方にリア王が娘たちに領地を分け与えるため地図をハサミでジョキジョキ切り分断するシーンがあったが、権力者の傲慢さがそこにあらわれていて、権力をめぐる争いの醜さは何100年たったって変わらないよ、ということをシェイクスピアはいってるようであった。

そういえば上映前のインタビューでマッケランは「この劇をみてドナルド・トランプを連想してもいい」みたいなことをいっていた。

日本の政治の現状に当てはめてもいいのではないかとも思ったのだった。