善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「さびしんぼう」

ニュージーランドの赤ワイン「セラー・セレクション・メルロ(CELLAR SELECTION MERLOT)2018」f:id:macchi105:20200703173731j:plain

ワイナリーはニュージーランド北島、東寄りの海に近い都市、ホークス・ベイにあるシレーニ・エステート。現在、日本に輸入されているニュージーランドワインの中で輸入量No.1を誇っているとか。メルロ100%。

 

ワインの友で観たのは民放のBSで放送していた日本映画「さびしんぼう」。

1985年の作品。

監督:大林宣彦、出演:富田靖子尾美としのり藤田弓子小林稔侍、岸部一徳樹木希林小林聡美。ほかにも秋川リサ佐藤允入江若葉浦辺粂子根岸季衣峰岸徹など懐かしい顔ぶれ。

 

82歳で亡くなった大林宣彦監督が「転校生」「時をかける少女」に次いで故郷を舞台につくった〝尾道三部作〟の最終作。寺の住職の一人息子で、高校2年生の16歳のヒロキの、初恋の切なさや両親への反発と和解など、思春期の揺れ動く感情を鮮やかに描いたファンタジー作品。

富田は公開当時まさしく16歳。清楚で純真無垢という言葉がぴったりなヒロイン。彼女の高校の冬休みを利用して本作は撮影されたという。

でも、長い髪の清楚な女高生より、ショートカットでピエロふうの女の子のほうが好きだなー。

 

カメラを趣味とするヒロキ(尾見としのり)は坂の上から望遠レンズのファインダー越しに女子高校を眺めていて、偶然、放課後にピアノを弾く少女(富田靖子)を見付ける。彼女を「さびしんぼう」と名付けるが、遠くから見るだけの憧れの存在だった。

そんなある日、友人2人と自分の家である寺の本堂を掃除したところ、母親(藤田弓子)の古い写真の束をうっかり散乱させてしまう。その直後、ヒロキの前に突然あらわれたのが、ピエロのような白塗りメイクでつなぎ服の奇妙な少女(富田靖子)。彼女がヒロキに名乗った名前も「さびしんぼう」だった・・・。

 

結局、富田靖子は、ショパンの「別れの曲」を弾く長い髪の女高生、16歳のときの母親の分身としてのピエロの少女、そして、ヒロキが成長して寺の住職を継ぐようになって結婚した長い髪の高校生そっくりの女性、そしてやはりピアノで「別れの曲」を弾く娘の高校生の4役をやっているといわれているけど(脚本もひょっとしてそうなっているかもしれない)、話の流れからいって、ヒロキは、切ない別れをした髪の長い少女と何年もたってから再会し、初恋を成就して結ばれた、そう思いたかった。

いや、そうでなければいけないと思った。

 

ヒロキは丘の上の立派な寺の跡取り。まあ当時としては地元の名家だろう。一方、長い髪の少女はおそらく貧しい家の娘だったに違いない。

島に住む少女のところにヒロキがクリスマスプレゼントを持って会いに行くシーンがあった。

少女は魚屋で魚を買っていて、財布をのぞいてお金が足りなかったのか一皿2匹のところを「1匹ください」と買っていた。

そんな彼女にヒロキは「別れの曲」のオルゴールをプレゼントだといって渡すと、彼女は「もう会うのをやめましょう」というようなことをいって2人は別れる。

それで2人の恋が終わってしまったとしたら、いくら青春とはいえあまりにも切ないではないか。

 

彼が恋を実らせた証拠に、ラストの場面で、娘が「別れの曲」を弾くピアノの上にはあのクリスマスプレゼントのオルゴールが飾ってあった。

 

映画監督の黒澤明は80歳近くのとき、テレビで放映された「さびしんぼう」を見て気にいったという話を大林監督にしていたという。そしてできたのが黒澤監督自身が実際に見た夢を原案にしたオムニバス映画「夢」(1990年公開)だった。