善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうの日本酒+映画「キリング・フィールド」

いつも日本酒を飲んでいるが、きのうはちょっと変わったところで栃木・宇都宮のにごり生酒「四季桜 冬の華 吟」。f:id:macchi105:20200420084754j:plain

たしかに真っ白の色をしたにごり酒ながら、意外とさわやかな味。

 

酒の友で観たのは、民放のBSで放送していたイギリス映画「キリング・フィールド」。上映時間が長いのでなかなか観られずにいたが、外出自粛の今なら時間は十分にある。

 

1984年の作品。

監督ローランド・ジョフィ、出演サム・ウォーターストン、ハイン・S・ニョール、ジョン・マルコヴィッチほか。

 

1970年代のカンボジアの内戦と、その後のポル・ポト政権による大量殺戮と破壊の実態を描いた映画。

ニューヨーク・タイムス記者としてカンボジア内戦を取材し、のちにピューリッツアー賞を受賞したシドニー・シャンバーグの体験にもとづく実話を映画化したもの。

シャンバーグの通訳兼助手となるカンボジア人のディス・ブランも実在の人物で、ブランを演じたハイン・S・ニョールはもともと演技経験のまったくない素人。カンボジア出身の産婦人科医で、大量虐殺を行ったクメール・ルージュのもとで4年の間、強制労働に就かされた経験を持つ。

この映画のいいところは、アメリカの侵略ともいえる内政干渉、そしてピューリッツアー賞受賞の記者も決して真面目一徹ではなく、特ダネ記事を得たいがためにカンボジア人通訳に犠牲を強いていたのをしっかりと描いていること。

 

カンボジア内戦ベトナム戦争が激化する中で起こった。当時、反米姿勢をとるシアヌーク政権に対して、アメリカは親米右派のロン=ノル将軍にクーデターを起こさせた。それはアメリカがベトナムで苦境に立っているのを一気に巻き返すためで、戦火はベトナムだけでなくカンボジアにも拡大していく。つまり内戦の仕掛け人はアメリカだった。

そこのところを映画はしっかりと描いている。アメリカ製作でなく、イギリス映画だからか。

戦争の実態を暴こうとするジャーナリストも決して善人ではない。主人公のアメリカ人記者は、自分がカンボジア語を話せないものだから何としてもカンボジア人通訳をそばにおいておきたくて、おかげで脱出が可能なときにカンボジア人通訳は脱出できなくなる。

その結果、外国人ジャーナリストたちは国外に脱出できても、彼はカンボジア人であるがゆえにポル=ポト政権のクメール・ルージュにとらえられ、強制労働に従事させられ、苦難の日々を送る。

全体主義の怖さがそこに描かれている。

同時にそれは日本にだって起こりうる光景ともいえる。何しろかつての戦前の日本が全体主義の国であり、戦後70数年たってもいまだにその反省が十分でない(どころか、あの時代を間違った時代だったと認めない人が首相をしているのが今の日本だ)。

 

映画の最後のほうではジョン・レノンの「イマジン」が流れ、エンディングはカンボジアの民族楽器で奏でる「アルハンブラの思い出」だった。