宮崎駿原作の新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」夜の部を観る。
出演はナウシカ尾上菊之助、クシャナ中村七之助、ユパ尾上松也そのほか。
会場に入って真っ先に目につくのが幕。
タペストリーみたいになっていて本物の織物のタペストリー?と思ったら風に揺れていた。
ナウシカの物語を描いたタペストリー風の引き幕で、青き衣の者、巨神兵らしいのとか、さまざまな場面が描かれていた。
客席は満員で、いつもの歌舞伎座とは違って圧倒的に若い女性が多い。男はチラホラ。やぱり菊之助、七之助、松也が中心の配役となるとこうなるのだろうか。
ナウシカはアニメ映画では見たことがあるが、漫画は未読。
本作は序幕から2、3、4、5、6幕目とあって最後が大詰。昼の部が序幕から3幕目まで、夜の部は4幕目以降と、ほぼ1日、正味6時間もかけての公演だが、アニメで描かれたのは最初の序幕まで。アニメでは描かれなかった、足かけ13年かけて雑誌に連載された物語のすべてを舞台化したのだという。
13年かけて紡いだ物語を6時間に圧縮したからか、あるいは後半の夜の部だけ見たからか、話はややこしくて、少々理屈っぽかった。
以前、新国立劇場でシェークスピアの「ヘンリー六世」を見たときは、エンエン9時間ぐらいの長丁場だったが、観客全員にあらすじと相関図が配られ、ロビーには年表なんかが張られていて、おかげで理解が進んだ。歌舞伎もそれぐらいの親切はしてほしいものだ。
舞台そのものはとてもすばらしく、菊之助や七之助にはほれぼれしたし、和洋中折衷の舞台装置や衣裳は歌舞伎ならでは。ナムリス役の巳之助が下界を睥睨しながら言うセリフは「楼門五三桐」の五右衛門のセリフそっくりだし、墓の主の精(歌昇)と巨神兵オーマの精(右近)との戦いは、ナント紅白の連獅子で表現していた。
歌舞伎とはまさに温故知新、古きをたずね新しきを知る、古いものから拝借して新しいものをつくり、それを何度も上演して磨き上げていくうちにやがて古典ともなっていくのだろう。