ニュージーランドの赤ワイン「セラー・セレクション・ピノ・ノワール(CELLAR SELECTION PINOT NOIR)2018」
ワイナリーはニュージーランド北島、東寄りの海に近い都市、ホークス・ベイに位置するシレーニ・エステート。
ニュージーランドのピノ・ノワールは、フランスのものと比較すると果実味豊かなタイプが多いのが特徴だとか。クオリティの高さや、ニュージーランドから日本への輸出量がNO.1という実績から、JAL(日本航空)国際線のエグゼクティブクラス(ビジネスクラス)機内ワインに選ばれた実績を持つワインだという。
ワインの友で観たのは、かなり以前に録画しておいた民放BS放送のインド映画「ミルカ」。
2013年制作。
原題は「Bhaag Milkha Bhaag」(ヒンディー語のラテン文字表記)
監督ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ、出演者ファルハーン・アクタール、ソーナム・カプール、ディヴィヤ・ダッタ、アート・マリックほか。
インド陸上競技界のレジェンド、ミルカ・シンの少年時代からの半生を描いた伝記映画。
1960年のローマ・オリンピック陸上競技400m決勝にミルカ(ファルハーン・アクタール)が姿を現すところから映画が始まる。
メダルの期待が高かったミルカだったが、スタートからトップの勢いで走っていいよいよ直線コースにさしかかったとき、「ミルカ、バーグ(走れ)!」というコーチのかけ声に思わず振り向いてしまい、結局4位に終わる。
当時、ミルカは金メダル候補ともいわれていたという。1958年の東京でのアジア大会で200mと400mで金メダル。同年の英連邦大会でも400m金メダル。オリンピック直前の60年のフランスでの競技会では400mで45秒80の記録を出し、これは当時の世界新記録ともいわれたらしい(非公認との説もある)。
ローマ・オリンピックでは45秒73で4位。振り向いたとしても自己記録を更新していて、この記録はその後40年間にわたってインド記録となっていたという。
優勝タイムはアメリカ人選手による44秒9。史上初めて45秒の壁を破る世界新記録だったというから、かなりのハイレベルだが、銅メダルの記録は45秒5。ひょっとしたら振り向いてさえいなければメダル圏内だったかもしれない。
なぜミルカは振り向いたのか?
実はコーチが叫んだ「バーグ(Bhaag)」には「走れ」と「逃げろ」の2つの意味があるという。
コーチが「早く走って逃げ切れ!」の意味で発した「ミルカ、バーグ!バーグ!」は、彼の少年時代の悲惨な記憶を喚起してしまったのだという。
ミルカはイギリス領インド、パンジャーブ州ゴーヴィンドプラ村、今のパキスタンに生まれたが、一家は敬虔なシク教信者だったという。1947年のインド・パキスタンの分離独立の際、ヒンドゥー教徒(シク教徒も含む)の国であるインドと、イスラム教徒の国であるパキスタンに分離独立することになった。
当時、国境近くのパキスタン側に住んでいたミルカの家族は、改宗してイスラム教徒になるか、シク教徒のままインドに強制移住させられるかの二者択一を迫られた。シク教徒に対するイスラム教徒からの迫害もひどく、ミルカの父親は分離独立の混乱の中、故郷の村でミルカに「バーグ!」と叫んで殺されてしまった。彼はいっとき孤児となり、難民キャンプで暮らしたこともあった。
ミルカの父親がミルカを生き延びさせたくて叫んだ「逃げろ!」の「バーグ!」が、オリンピック決勝のコーチの「バーグ!」と重なって、記憶が呼び戻されてしまったのだ。
映画の最後の方で、国民的英雄となったミルカが、悲惨な暮らしの中で生き抜く少年時代のミルカと並んで走るシーンがある。もちろん幻想の世界なのだが。
走っている2人は満面の笑みを浮かべている。苦しみや悲しみを突き抜けて、走ることに喜びを感じるようになった過去と現在のミルカ。
だから映画の原題は「Bhaag Milkha Bhaag」、「逃げろミルカ、ミルカ走れ」なのだろう。
ところで、シク教というと頭に巻いたターバンで知られるが、インドでシク教徒は人口の2%足らずしかいないという。2%といっても何しろ人口13億人もの国だから、信者の数は約2400万人といわれる。
シクとは弟子の意味で、師(グル)の弟子(シク)として忠実に教えを守ることからシク教という。
16世紀初め、シク教の初代グルとなるナーナクが、ヒンドゥー教とイスラム教の教えだけでは物足りない、ヒンドゥー教とイスラム教を調和させた宗教を起こそうと沐浴中に啓示を受け、布教を始めたとされる。やがてシク教はパンジャーブを中心に北インドに広まっていった。
シク教の特徴として、カーストの全否定、肉は何でも食べていい、一生懸命仕事をする、他の宗教を尊重する、酒、タバコ、麻薬の禁止、苦行の禁止、偶像崇拝の禁止、同性愛に対する差別の禁止、出家の全否定、体毛を剃ったり切ったりすることの禁止、などがある。
体毛を剃ったり切ったりすることが禁止されていることから、シク教徒の髪の毛は伸び放題。そのままでは生活がしずらいため、ターバンを巻いているし、ターバンがないときも髪の毛を巻いたスタイルになっている。
普段ターバンが必須なため、インドの法律でシク教徒はバイクに乗るときヘルメットをかぶらなくてもよいとされているという。
とにかくいろんな意味で勉強になる映画だった。