善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

センチメンタル・アドベンチャー

先日の昼NHKBSでやっていた『センチメンタル・アドベンチャー』を観る。
1982年のアメリカ映画。
原題は「HONKYTONK MAN」
ホンキートンクとは、しけた安キャバレーとか安劇場の意味らしい。とするとホンキートンク・マンとは、しけた流しのカントリー歌手といった意味か。
製作・監督クリント・イーストウッド、出演クリント・イーストウッドカイル・イーストウッド(14歳)ほか。

カイル・イーストウッドクリント・イーストウッドの長男。このとき14歳。よくみると垂れ目のあたりが父親にそっくり。なかなかの名演技で、本作はカイル・イーストウッド主演といってもいい作品だったが、のちに俳優ではなくミュージシャンになったようだ。

イーストウッドの映画はあらかた観ていたと思ったが、この映画ははじめて観た。
いかにも80年代の作品らしい、いい作品だった。
アメリカ版“フーテンの寅さん”的な雰囲気もあった。
根なし草の兄をいつも心配している妹。
おじさんの生き方に次第にシンパシーを持つようになる甥っこ・・・。

物語は──。
各地を転々としながら流しのカントリー歌手(HONKYTONK MAN)として生きているレッド(クリント・イーストウッド)は、カントリーミュージックの聖地ナッシュビルで放送されるラジオ番組「グランド・オールド・オープリー」のオーディションに向かうため、姉の息子の少年ホス(カイル・イーストウッド)とともに旅に出る。
実はレッドは重い肺病を患っており、さまざまな騒動をへて、やっとのことでたどり着いたナッシュビルでのオーディションの最中、歌っているときに咳き込んでオーディションは中断してしまう。
そしてついにレッドは──。

酒場で歌うシーンなど、随所でクリント・イーストウッドが歌っている。けっして美声とはいえないが、なかなか素朴な味わいがある。
特に、ほとんど死の間際に、自作の歌である「ホンキートンク・マン」をレコーディングするシーンはぐっと胸に迫る。

旅の途中、黒人ばかりがたむろする酒場で、レッドのピアノ伴奏で黒人の女性歌手がブルースを歌うシーンもジンときた。
歌が終わって、酒場を出ようとするレッドとその女性歌手が冗談を言い合うが、「こんど抱き合ったら、あんたの色をオレにも移してもらえるかな」とやさしく語りかけるレッドのセリフが何ともステキ。

映画でイーストウッドが死ぬというのは「グラン・トリノ」しか記憶がないが、珍しいのではないか。

酒場のシーンに一瞬だけ、イーストウッド監督・主演の「ペイルライダー」に冷徹な悪徳保安官役で出ていたジョン・ラッセルが登場していた。セリフはなく、ただ座っているだけだった。
「ペイルライダー」は1985年の作品。友情出演だろうか。