善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

9月文楽公演の津駒大夫

きのうは国立劇場「9月 文楽公演」を見る。
第1部の「面売り(めんうり)」「鎌倉三代記(かまくらさんだいき)」「伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)」
平日の昼間というのに客席は満員。着物姿の女性も目立った。男性客もけっこう多い。そこが歌舞伎と違うところか。ひいきの大夫が出ると「○○大夫!」と声が飛んでいた。

文楽はこのところ世代交代が進んでいて、特に大夫は若手が活躍している。また、大ベテランが引退したり亡くなったりしているから、そうならざるを得ない。若い若いと思っていた呂勢大夫、咲甫大夫なども中堅の部類だ。

きのうは、もはやベテランの津駒大夫がよかった。人間国宝・寛治の三味線にも助けられていただろうが。
「鎌倉三台記」の「三浦之助母別れの段」、母や恋人の時姫との別れ。切々とした母のくどき、時姫の切ないくどきが、津駒大夫の艶っぽい声で心に届く。嶋大夫の色気のある艶っぽさとはまた違った響きだ。

「伊勢音頭恋寝刃」の「古市油屋の段」では、咲大夫のセリフ回しが見事。

それにきのうは人形が格別美しかった。前から2列目の中央付近に座り、きのうは舞台前面にまで人形がせりだしてきたので、ことによく見えたが、合戦に向かう三浦之助の凛々しいこと。今月の文楽公演のポスター写真にも写っている。

ところで劇場で買った公演のパンフレットにも津駒大夫のインタビューが載っていた。
何と彼は中央大学法学部の出身という。ということは弁護士か検事か裁判官か、法曹界を目指していたのだろう。大学2年のとき、たまたまテレビで文楽の舞台中継を見て、大夫をめざそうと思ったという。
ちょうど70年安保のころというから、今から45年ぐらい前の話。ハタチぐらいから文楽の世界に入ったというのは当時としては遅い出発で、ずいぶん苦労したに違いない。

これからの津駒大夫が楽しみになった。