善福寺公園めぐり

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2月文楽公演 花競四季寿 天網島時雨炬燵 紙屋内の段

国立劇場2月文楽公演第2部『花競四季寿』『天網島時雨炬燵 紙屋内の段』を観る。

今年初の東京での文楽公演、というので初春らしく『花競四季寿』としたのだろう。
午後2時半開演と真っ昼間の公演だからか、客席には女性が目立つ。
前から3列目の中央の席だったので、人形の細かいところまでよく見える。

『花競四季寿』は題名の通り春夏秋冬それぞれを背景にした踊りの舞台。
秋の巻では小野小町が何と百歳の老婆で登場する。人間国宝吉田文雀が人形を遣うはずだったが、病気休演で代役は和生。

『天網島時雨炬燵 紙屋内の段』は、近松門左衛門の「心中天網島」を書き換えた作品。
2006年に同じ国立劇場で「河庄の段」「紙屋内の段」「道行名残の橋尽し」をみているが、「紙屋内の段」の前半はカットされていて、前半も含めてこの段を通しで上演するのは1980年(昭和55)以来35年ぶりという。

前回も今回も「紙屋内の段」の切(きり)は嶋大夫。

人形遣いは、前回のときは遊女小春が和生、治兵衛が勘十郎、おさんが簑助だったが、今回は小春は簑助、治兵衛に玉女、おさんに和生。玉女は4月の大阪公演で2代目吉田玉男を襲名するので、玉女の名前での本公演は今月が最後となる。

近松作の元の「心中天網島」と比べると、改作された今回のはたしかにドラマチックにはなっているが、果してそれが成功したのかどうか?
治兵衛をトコトンだめな人間として描く原作のほうに、むしろひかれるのだが。

人形遣いでこのところ注目しているのが玉佳(たまか)。ご本人には悪いがその風貌がいかにも愛嬌があって、和む。
今回は『花競四季寿』『天網島時雨炬燵』の両方に出演していたが、『花競四季寿』では万歳の才蔵、『天網島時雨炬燵』では丁稚の三五郎、どちらも人形とそっくりの表情をしていて、これぞ“人面一体”というべきか。