善福寺公園めぐり

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新印象派 光と色のドラマ

東京都美術館で開催中の「新印象派 光と色のドラマ」展を見る。(3月29日まで)
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スーラをはじめ、点描法で描かれた作品群を生み出したのが新印象派の画家たち。
モネなどの印象派の画家たちの影響を受けつつ、それを発展させたものだというが、本展を見て、科学的根拠に基づく“理論派”の画家たちだということがよくわかった。
よりリアルな光や空気感を出すにはどうしたらいいか、試行錯誤した結果が点描なんですね。

日本の画家たちも明治期、日本画に西洋絵画に負けない光や空気感を出すため“朦朧体”という表現方法をつくり出したが、同じことをヨーロッパの画家たちも考えていたのだった。

都美術館のHPによると、新印象派について次のように説明する。
印象派は、揺れる水面や陽光のうつろいなど、自らの目に映る世界を描き出そうとし、それに相応しい様式を作り出しました。その明るい画面を作り出す様式を、新印象派は最新の光学や色彩理論を援用して発展させていきます。そして、目に見える世界をそのまま再現することよりも、色彩そのもののもつ表現力へと関心を移していき、20世紀初頭のフォーヴィスム誕生への源泉になりました」

ミシェル=ウジェーヌ・シュヴルールというフランスの化学者がいる。脂肪酸の研究が専門というが、色彩の研究でも知られ、「類似色の調和」「対比の調和」といった配色調和の定義・分類を行った。このシュヴルールの影響を受けたのがスーラたちだ。

スーラが恐れたのは色を混ぜることによって起こる「色のくすみ」だったのではないか。パレットの上で絵の具の色を混ぜてしまえば、色はくすんでしまい、鮮やかさはなくなってしまう。そこでスーラは、配色調和の理論にもとづいて絵の具を原色のままキャンバスに乗せていった。

色を混ぜるのではなく、点のように置いていくことにより、色彩の知覚を見る人に委ねた。見る人が自分の目の中で混ざり合った色を知覚することにより、豊かな色彩が生まれるのだ。

スーラとシニャックのパレットが展示されていたが、どれもきれいで、濁った色はない。

点描の技法による光の表現がすばらしい。
たとえばスーラの「セーヌ川、クールブヴォワにて」(1885年)。
水の色、影が美しい。

影といえば、アンリ・ドラヴァレーの「冬の井戸」(1887年)。
夕日が斜めに差していて、井戸の影は緑やオレンジで表現されている。

オレンジと緑(緑青)は補色の関係なので、引き立つ効果をねらったのだろうか。

ジョルジュ・モレンの「日没」(1891年)。
燃えるようなオレンジを基調とした空と海。

ヤン・トーロップの「マロニエのある風景」(1889年)。
ピンクの色合いが不思議な魅力を放つ。

マクシミリアン・リュス「カマレの埠頭、スヤニステール県」(1894年)。
夕方の風景だが、海は白と青で表現されている。

うーむ、本展は「これ!」という大作がないかわりに、勉強になる展覧会だった。

何しろ出品作は109点。印象派のモネの作品から始まり、スーラ、シニャックによる新印象派初期の作、その後フランスやベルギーで次々と生み出された多様な新印象派の作品、さらにマティス、ドランの作品が大結集。
しかし、はじめのうちは新鮮で、大胆な書き方の作品が目立つが、だんだんおもしろさがなくなっていく。
何しろ言い出しっぺのスーラは31歳の若さで病気で亡くなってしまう。
印象派の影響を受けたのがマティスだ。影響を受けつつも、点描の技法から脱却することにより、マティスは新しい色彩の表現を獲得する。より原色を際立たせた美しさだ。

絵画の歴史は連綿とつながっているんだなー。

美術館の前庭に展示されていた「球体」。
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