善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

アイルランド旅行記 その3

7月13日(日)、「ダークヘッジ」のあとは、コーズウェイコーストと呼ばれる海岸にある「キャリック・ア・リード吊り橋」へ。

断崖絶壁の岬とキャリック島という小さな島を結ぶ長さ20m、幅1mの吊り橋で、海からの高さは28mある。
350年ほど前、サケの漁場に向かう漁師によって架けられた橋だが、いま渡るのはもっぱら観光客。スリルと絶景が味わえるというので長蛇の列。
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吊り橋はこんな感じ。たしかにコワイ。
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キャリック島に咲いていた花。
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続いて訪れたのがジャイアンツ・コーズウェイ(巨人の石道)。1989年に世界遺産に登録された。
自然の造形のスゴサ、すばらしさを堪能できるのがここ。自然が選んだ最強・最高のデザインとは、「六角形」だった。

行ってみて驚いた。何とすべての風景が、規則正しく六角形の石柱を並べたようになっているではないか。
巨人の門から入り、巨人のオルガン、巨人のブーツなど、巨人伝説にちなんだ造形があちこちに点在している。

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巨人のブーツ。
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巨人のオルガン。
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なんでこんな形になったのか?

アイルランド島はもともと、地殻変動によってヨーロッパ大陸が裂け、火山の噴火によって誕生した島と考えられるが、約6000万年前の火山活動によって流れ出た溶岩が、急速冷却されて凝固する過程で規則正しい割れ目ができ、最小エネルギーで凝縮した形が六角形の柱を積み上げたような「柱状節理」と呼ばれるもので、石柱の数は4万にも及ぶという。
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どれも見事な六角形。
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「六角形」とは、人間でも思いつかない知恵の結晶のようなものだ。
有名なのはミツバチの巣の形。

ミツバチの巣のことを「ハニカム」という。六角形の小部屋1つ1つが巣房であり、働き蜂はそこにハチミツを貯蔵し、女王蜂は卵を産みつけていくのだが、規則正しく縦横に並んだミツバチの巣の構造、つまりハニカム構造は人間でも考えつかない理想の形をしていて、逆に人間の方がミツバチの知恵から学んでいる。
たとえば、宇宙ロケットやジェット旅客機にはハニカムの部材に薄板を張ったハニカムサンドイッチパネルが使われているし、新幹線車両、自動車などにもハニカム構造が用いられている。

ミツバチはどうして六角形を選んだのか。答えは簡単。最小の空間に最もたくさんの、しかも頑丈な巣をつくるには六角形が一番適しているからという非常に合理的な理由からだ。

最小の材料で強度の強いものをつくろうとしたら、一番いいのはまんまるの円。ガソリンや高圧ガスなどを運ぶタンクローリーが丸い形をしているのも、ビールのビンや、トンネルが丸いのも、それが理由。

ただし、まんまるの円をたくさん積み重ねていくと、円と円の間に隙間ができてしまう。このような無駄な空間をなくし、なおかつ円に近いものをつくろうとしたら、材料が最小で、なおかつ隙間がなく、最も強度が強くて安定した構造体となるは、六角形なのだ。

驚いたことに、ミツバチはこれほど見事な立体建築を定規やコンパスもなしに正確に計測し、美しい幾何学模様を完成させてしまう。

これと同じことをやっているのが、ジャイアンツ・コーズウェイにみられるような自然の造形だ。
ミツバチは人間ほどではないにしろ脳がある。ところが、自然にはそんなものない。考えもしないのに理想的な形をつくってしまっている。

いや、実は自然も「考えて」いるのではないか。ジャイアンツ・コーズウェイをみるとそう思いたくもなる。

そもそも、風の吹き方、波の寄せ方、そうした自然の行為そのものが「自然の思考」の結果ではないのか。
「カオス」というのがある。
カオスとは、一見無秩序に見えるが、背後に無数の秩序構造を持つものという力学現象をあらわす。カオス現象はごく当たり前にどこにでも起こっていて、風に吹かれて揺れる木の葉、地震のゆれ、海岸に打ち寄せる波、すべてカオスによるものであり、自然の「思考」がもたらしたもの、といえなくもない。

と、話がトンデモないところまできちゃったが、自然が作り出す六角形の造形は日本にもある。たとえば、兵庫県豊岡市玄武洞では、玄武岩が積み重なった柱状節理を作り、1つ1つが六角形をしているが、これは160万年前の溶岩が冷えて固まる時に誕生したといわれている。

しかし、何といっても壮観なのはジャイアンツ・コーズウェーである。
1日中みていても飽きないほどだった。

帰りは、世界最古、1608年操業のウイスキー醸造所Bushmillsの工場に立ち寄る(時間の関係で試飲はなし)。
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ウイスキーの歴史はアイルランドにさかのぼることができるという。
記録として最初にあらわれるのは1171年、イングランドのヘンリー2世の軍隊がアイルランドに侵攻したとき、住人たちが飲んでいたのが大麦の蒸留酒だった。
この蒸留酒ゲール語で生命の水を意味する「ウースカ・ベーハ」または「ウスケボー」と呼ばれていて、これこそがウィスキーの元祖だといわれている。

夕方、きのう泊まったカローデンホテルへ。
夏のころのアイルランドは午後10時ぐらいまで日が沈まないから、夕方といってもまだ昼のよう。