善福寺公園めぐり

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アイルランド旅行記 その4 ベルファストからロスコモンへ

7月14日(月)はベルファストから再びアイルランドに入って、アイルランド島中央部にあるロスコモンへ。

まずはベルファスト市内観光。
かつてこの町は1970年代から30年以上にわたった北アイルランド紛争の舞台となった。
過去の歴史的な問題がからんで単純にはいえないのだが、イギリスの一部となっている北アイルランドにおいて、少数派のカトリック系住民がイギリスからの独立とアイルランドへの帰属を求めて運動を起こし、イギリスのままでよいとするプロテスタント系住民との対立が先鋭化し、武力による流血にまで発展したのが北アイルランド紛争
ちなみに、アイルランドの9割近くはカトリックであり、逆にイギリスはプロテスタント英国国教会
双方のテロの応酬で3600人以上が亡くなったという。

この日はあいにくの雨だったが、ベルファストの町並み。
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昼食のため訪れた「ヨーロッパホテル」は紛争を取材したジャーナリストたちがよく泊まったホテル。しばしば爆弾テロの標的となり「世界一爆破されたホテル」としてギネスブックにも載っているのだとか。
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しかし、和平の話し合いが進み、2005年にはカトリック系の武装組織IRAが武器の放棄を宣言。07年にはイギリス軍が撤退し、ようやく平和が訪れた。

だが、カトリックプロテスタントとの対立はそう簡単にはなくなるものではない。
旅行会社が用意したもともとの予定コースにはなかったのだが、この日、市内観光のガイドをしてくれた日本人のガイドさんが、ぜひベルファストの現実を知ってほしいと案内してくれたところがあった。

隣り合うカトリックプロテスタントの住民を隔てる壁「ピース・ライン」だ。「ピース」といっておきながら、「断絶の壁」にほかならない。かつての「ベルリンの壁」に似ている。
途中、何カ所かゲートがあったが、閉じられたままで開けられる気配はない。
壁にはびっしりと壁画が描かれていて、政治的なメッセージを込めたものが多かった。
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出来ばえもなかなかいい。
そういえば、ピース・ラインに限らず、ベルファストでは建物の壁などに巨大な壁画が描かれている光景をよく目にした。
メキシコでは革命と連動して「壁画運動」が盛んになり、リベラやシケイロスらの画家たちが活躍したが、同じようにベルファストでも、政治的主張を絵で訴える動きがあったのだろうか?

ピース・ラインを見たあとは「タイタニック博物館」へ。
豪華客船タイタニックは、ここベルファストで建造された。タイタニックの建造と悲劇から100年たった2012年にオープンした博物館。建物の高さはタイタニックと同じ高さだそうで、正面から見るといかにもタイタニック
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中は体験型ミュージアムになっていて、乗り物に乗って造船所の様子を見て回ったり、船内を3Dで再現してまるでタイタニックに乗っているような気分にさせてくれるなど、なかなか凝っている。
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その後、セント・アンズ聖堂、シティホールなどを見て回ったが、立派なケルト十字が目についた。
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キリスト教のシンボルであるラテン十字のうしろに太陽信仰をあらわす円を組み込んだのがケルト十字(ハイクロス)。
アイルランドでは、キリスト教ケルト人たちが信仰していた自然崇拝を廃絶するのではなく、むしろ融合した形で広がっていった。それを象徴するのがケルト十字だ。

市内観光のあとは一路、ロスコモンへ。宿泊先は、領主の館(マナーハウス)を改装したというアビーホテル。
外観はいかにも元お城という感じ。
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ホテルの敷地内(あるいは隣か?)には廃墟となった修道院の跡があった。
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アイルランドでは修道院や教会の廃墟をよく見かけた。壁はレンガづくりだが、屋根は木造なので、屋根がなくなってこんな感じで残ったのが多い。
なぜ廃墟のまま放置されているのか?
教会の中とか外には墓がある。キリスト教は土葬なので、墓を動かすことが簡単にできない。なのでそのまま残されているのだろうか。