善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

牛はなぜ北を向く

保険料で確認したいことがあり、昔の社会保険庁、今の日本保険機構に電話した。「ねんきんダイヤル」というやつだ。すると、「もしもし」の声なんかよりも前に、録音された声でいきなりこう言ってきた。

「この電話を録音させていただきます」

言った、言わないでもめることのないようにという“配慮”なのかもしれないが、自分の声が役所のどこかに保管されるのかと思うと、あんまりいい気持ちじゃなかった。

で、そのあと、保険料の支払いで駅前の銀行へ行った。
たまたま入ったその銀行(三菱東京UFJ銀行)は1階はATMコーナーで窓口は2階というので階段を上っていく。
すると警備員が待ち構えていて、「税金・公共料金は3階です」という。2階はお得意様向けというわけか。

「うへー、まだ上か」と、えっちらおっちら登っていくと、さすがにここまでくる人は少ない。まあ、健康のためには階段をのぼるのもいいのかもしれないが、年寄りは大変だろうなーと思ってしまう(エレベーターもあるが)。

所定の用紙(税金・公共料金納付確認書)に納付日、名前、電話番号を記入し、窓口の女性に現金をそえて出すと、つっかえされる。

「現金か振込かのところにチェックの印がない」という。

「そんなの、現金で出してるんだから一目瞭然じゃん、そっちでチェックの印をサッと入れてくれればいいじゃん」と思うが、彼女の目は「私はそこまでサービスするつもりはありませんよ」と決然としている。

「すべて自分でやれというわけなのね」と、自分で「レ」のチェックを入れて出す。
それでようやく彼女も受けつけてくれて、今度は現金の金額を表示した大型の電卓を目の前にかざして言う。

「この金額で間違いありませんか!?」

「そんなに大仰にしなくたって、ひとこと、いくらいくらですね、といってくれればすむ話じゃん」(どうも最近、「あまちゃん」の小泉今日子を見ているためか、「じゃん」が多い)と思うが、「はい、そうです」とスナオに従う。

日本保険機構への電話にしても、銀行の窓口の対応にしても、あとでモメるのを避けて利用者の責任をハッキリさせようということなのかもしれないが(おそらく、銀行の場合は高額預金者に対してはこんなにツッケンドンではあるまい)、なんかギスギスしたものを感じるのは、私だけだろうか?

前置きが長くなった。
それはともかくとして、銀行の窓口で待ってる間に読んだ本でおもしろい箇所があった。

元村有希子サンという毎日新聞科学環境部の記者が書いた『気になる科学』(毎日新聞社)の88ページ、「牛はなぜ北を向く」

著者によると、放牧中の牛や休息中のシカの多くは、南か北を向いているらしい。

これは当てずっぽうじゃなくて、ドイツとチェコの研究チームがマジメに調べた結果。衛星からの画像をインターネットで公開している「グーグルアース」を使い、五大陸308カ所の牛8510頭を調べた。すると、頭を向けている方向は南北のほうが東西より多かったという。

チェコでは2974頭のシカを対象に、群れや雪上に残された休憩のあとを観察したところ、エサを食べたり休んでいたりした大半が頭を北に向けていた。

研究チームはその理由として「地磁気による影響」という仮説を考えているが、なぜそれに反応するのかの理由はわからないという。

長距離を移動する渡り鳥や、生まれた川に帰ってくるサケなどは、進む方向を決める際に地磁気を参考にしていることが知られるし、ミツバチが花蜜の位置を仲間に教えるときも、太陽の位置とともに地磁気を利用しているといわれている。

しかし、ジッと動かない安楽のときも、動物というのは南北にこだわった姿勢でいるものだろうか?

人間の場合、というか日本では「北枕」は不吉とされるが、これはたぶん迷信だろう。
釈迦が入滅の際に北の方角へ頭を置いて横になった故事にもとづき、死を忌むことから「北枕は縁起が悪い」とされたのだが、中国ではむしろ、「北枕は体にいい」という説があるらしい。北は寒くて、南は暑い。つまり「北枕」は「頭寒足熱」で体にいいというわけだ。「地球の磁力線に体が沿っていることによって血行が促進される」との説もあるらしい。

私の場合も、今ごろの暑い季節になると、北側の窓をチョッピリ開けて、頭を北にして寝ると寝心地がいい。

ただし、朝、寝ながら新聞を読むというときは、朝の日差しの関係で、東からの太陽を浴びながら利き腕の右手を動かすことになるので、北枕より、右手が自由になる南向きのほうが具合がいいのだが。