善福寺公園めぐり

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横浜美術館 ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家

きのう24日(日)は横浜みなとみらいにある横浜美術館へ。
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3月24日まで開催中の『ロバート・キャパゲルダ・タロー 二人の写真家』展を観る。
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今年はロバート・キャパ生誕100年だそうだ。それを記念する展覧会だが、そもそもロバート・キャパというのは架空の名前で、ハンガリー出身のアンドレフリードマン(1913年~1954年)というのが本名。それどころか、当初、ロバート・キャパフリードマン1人の名前ではなく、彼と行動を共にしたドイツ人女性ゲルダ・タロー(本名ゲルタ・ポホリレ、1910年~1937年)との共同の名前だったという。

キャパとタロー、それぞれの写真作品約300点を集めた2つの「個展」で構成されるのが今回の展覧会。

2人は1934年にパリで出会い、意気投合したが、先輩格のフリードマンは18歳のとき、トロツキーを撮影した写真で一時的に名を知られたものの、その後は鳴かず飛ばずで極貧の生活をしていたという。
そこで2人は1936年春、「ロバート・キャパ」という架空の名を使って報道写真の撮影と売り込みを始める。

仕事が軌道に乗るようになってフリードマンは「キャパ」に取ってかわり、タローも写真家として自立していくが、1937年、タローはスペイン内戦の取材中に事故で命を落とす。
だからキャパの初期の作品の中には、タローが撮った写真も含まれている。

2人の写真を見比べると、やはり違いがわかる。戦場で戦う女性とか、子どもを多く撮っているのがタローで、下からの視線で撮っているものが多い。
その理由は、フリードマン(のちのキャパ)がライカを使っていたのに対して、タローが使っていたのが「二眼レフ」のローライフレックス。上からのぞいて撮るカメラなので、どうしても下からの目線になるのだろう。

話が変わるが、先日、NHK沢木耕太郎氏の推理ドキュメントとかいか触れ込みで、キャパが撮ったスペイン内戦下の「崩れ落ちる兵士」について、あれは撃たれて倒れたところではなく、単に訓練中に滑って転んだところを撮っただけ、撮影者もキャパではなくタローだったと、カネと暇にあかして作った番組が放送されていたが、あんなナンセンスな番組はなかった。

キャパはあの写真について「撃たれて死んだ兵士」と語ることはなかったという。
また、たとえ訓練中に滑って転んだだけの写真だったとしても、だからどうなの? 評価が下がるの? と聞きたい。
スペイン内戦の歴史的位置づけの中では、「崩れ落ちる兵士」として十分な報道写真の役割を果たしたといえるのではないか。

撮ったのはキャパじゃないと鬼の首をとったように騒ぎ立てても、そもそも当時キャパは2人で1人だったのだから、タローが撮った写真だったとしても別に驚く話ではない。

ところで、ゲルダ・タローという名前もペンネームだが、その由来を初めて知った。
画家の岡本太郎の名前からとったのだという。
岡本太郎ゲルダ・タローは年は1つ違い(学年でいえば同学年)。太郎は1930年から10年間、パリに滞在していて、キャパやゲルダ・タローとは友人関係にあったらしい。よほど太郎のことを気に入って、自分のペンネームとして拝借したのだろう。

キャパが撮ったノルマンディ上陸作戦の写真もあらためて見たが、生々しい。
敵の砲撃が雨あられと飛んでくる最前線で、その兵士より前にいて、突き進むところを撮影している。つまり最前線の兵士より前で、敵に背中を向けて撮るわけだから、決死の撮影とはこのことだろう。

プリント写真の裏側が展示されたものもあった。写真はネガではなくプリントしたものを製版に回して印刷物にするから、「要返却」とか、キャプションとかのいろんな書き込みがあっておもしろい。これも「歴史資料」だ。

キャパが最後にカメラを向けていたのは、インドシナ半島フランス軍に従軍し、地雷を踏んでカメラを持ったまま死んだ。そのとき持っていたカメラは、モノクロ用のライカと、カラーフィルムを納めたニコンSだったという。

帰りに常設展に寄る。こちらはカメラOKというのでパチリ。
現在は「光をめぐる表現」をテーマに展示していて、こちらはスタニスラフ・リベンスキーとヤロスラヴァ・ブリフトヴァの「アーチ雲」(ガラス)。
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ホセ・シャーディエの「ツイン・タワー」(ガラス)。
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生田丹代子「揺-21」(ガラス)。
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ダリの「幻想的風景 暁、英雄的正午、夕べ」と「ニュートンを讃えて」(手前のブロンズ)。
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展覧会の帰りは近くのクイーンズイースト1階の「キハチ・イタリアン」でランチ。
前菜、パスタ、デザート、コーヒーで2625円也。ほかにグラスワインが800円でチョイ高め。
でも、2人で行ってシェアしたので2人分の味を楽しめた(ついでにワインも白赤2杯)。

前菜は、京都丹波産京赤地鶏レバーのバルサミコ煮と季節野菜のサラダ仕立て。
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炙りサーモンのカルパッチョ
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パスタは、ワタリ蟹と大粒アサリの新海苔クリームスパゲッティ、柚子胡椒風味。
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タコとほろ苦野菜のスパゲッティ、トリュフ香味オリーブアンチョビソース。
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デザートはイチゴのモンブラン
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美術館前の風景がおもしろかったので1枚。
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