善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

釜山・慶州の旅3 なぜ藁葺き屋根はキノコ型か

4月5日から8日まで3泊4日で韓国の釜山・慶州 の旅、2日目続き。

慶州での昼はサムパッ(サムパプ)の店へ。
「サムパッ」の「サム」は「包む」、「パッ(プ)」は「ご飯」。肉とか野菜とかキムチとか、いろんなものを包んで食べる料理。目の前に並んだおかずは50種類もあるだろうか?
とても食べきれない。
店のすぐ前が「大陵苑」という新羅時代の古墳23基が散在する公園で、「瞻星台(チョムソンデ)」という古代の天文観測施設がある。
高さ約9メートル、7世紀につくられた東洋でもっとも古い天文台だとかで、陰暦の1年を表わす361個半の石で組み上げられている。
イメージ 1

なるほど、陰暦だと1年は361日になるらしいが、では361個半の「半」とは?
足りなくなったので半個追加したのか? このあたり、大陸的鷹揚(おうよう)さゆえか?
あるいは閏年の分を加えたのかもしれない。

昼食のあとは、慶州市郊外にある世界遺産の村、良洞民俗マウルへ。
解説書には次のように書かれてある。

新羅の古都として知られる慶州市内から北へ約20キロほどのところに位置し、雪蒼山(ソルチャンサン)の麓に広がる一つの集落が良洞村。今から500年以上前の家屋が今もほぼそのままの状態で保存され、約160棟が森の中にひっそりとたたずむ美しい村。良洞村は、驪江李氏(ヨガン・イシ)と月城孫氏(ウォルソン・ソンシ)という2つの名家が500年以上共存してきた同姓集落としては珍しい歴史を持ち、韓国にある民俗村の中でもかなり由緒深い名門集落に数えられます。

ここでは人々は昔ながらの暮しを続けており、屋根は藁葺き、オンドルも薪で焚くという。
藁葺き屋根が日本とは違って変わっている。丸みを帯びたキノコ型をしているのだ。
イメージ 2

瓦屋根が、角が反り返ってツンと上を向いているのとは好対照だ。
イメージ 3

なぜこんなふうに丸みを帯びるかというと、まず、藁で葺くとき、日本では茎の方を先にするが、韓国では穂先を先にして葺く。その後、ヨンマルムという藁で編んだ覆いをかぶせ、これを縄でくくっていく。このため余計に丸みがついたキノコ型になるのだそうだ。
これだと簡単に葺き替えができるのだそうで、その一方で耐用年数は短く、日本だったら一度葺き替えれば2、30年はもつのに、こちらでは数年ごとに藁を葺き替えないといけないという。

耐用年数は短くても簡便さを求めた韓国の藁葺き屋根。一方、葺く手間はかかっても長持ちする方を選んだ日本の藁葺き屋根。国民性の違いがそこにあるのだろうか。

丘の上の眺めのいい場所にある観稼亭。ヨーロッパのパティオのように、中央の庭を取り囲むように部屋が並んでいる。
イメージ 4

「観稼亭」という名前がおもしろい。穀物が育つのを見るように子孫たちの成長を見守るという意味だとか。

ある家をのぞくと、レンガのようなものが積み上げられていた。味噌だそうで、これを左の瓶に入れ、発酵させてしょう油を手作りしているのだとか。
イメージ 5

はて、たしかに味噌しょう油も大豆が原料だが、しょう油って味噌から作られるの?

帰って調べると、柳田友道著の『うまみの誕生』(岩波新書)によれば、味噌、しょう油の源は中国の「醤(しょう)」で、これがいろいろ分化して朝鮮半島や日本に伝わっていった。醤は唐の高僧鑑真が日本へ持ってきたとか、朝鮮半島経由で日本に伝わったという説もあるという。
事実、近江や越後には高麗人の遺跡が多数残されていて、これらの地方では豆味噌が作られていていたという。

しょう油はもともと、味噌の副産物だった。
日本でのしょう油の誕生についてはこんな逸話がある。
鎌倉時代の初期、覚心という僧が中国に学び、そこで得た技術を持ち帰って作ったのが「金山寺味噌」。この味噌を醸造するおり、発酵槽から垂れてくる色の濃い液汁が調味料としてすばらしいことに気づき、これを「溜まり」と称して実用化した。これこそが日本のしょう油の元祖であるという。

現在、しょう油は大豆を煮たものに麹と食塩水とを混ぜた液状の醪(もろみ・発酵液)を、攪拌しながら発酵させて作っているが、良洞民俗マウルのしょう油は、味噌からしょう油へという昔ながらのやり方で作られているようだ。

最後に国立慶州博物館を見て回って、釜山へ。
朝はチョボチョボだったサクラが、釜山に戻るころにはかなり咲いてきている。サクラは時間を追いかけて咲いていく。

この日の運転手兼ガイドは「釜山カモメツアー」の曺(チョウ)さん。とても日本語が上手で、しかもわかりやすく詳しくガイドしてくれた。
本日まる1日、車と運転手兼ガイド貸し切りのお値段は高速・駐車場代込みで26万1000ウォン(2万880円)。1人7000円いかない。日本から日本語で予約できるし、日本の旅行会社のオプショナルツアーで行くよりダンゼン安い。

夜は地下鉄でチャガルチへ。運賃は80円ちょっと。
海鮮市場で有名なチャガルチ市場があるところ。朝だけでなく、夜もにぎわっている。
あすここで昼食を食べる予定なので、ちょっとのぞいてみようと歩くと、モーレツな客引き。客引きのオネーサンたちの日本語の上手なこと。慌てて退散。

サムゲタンを食べる予定だったが、お目当ての店は休業中か閉店したか移転したか?で、かわりに繁盛している焼肉屋を探して食べる。3人で4万ウォン(3200円)。

おなかいっぱいになって屋台通りを歩いていると、カキを専門にする屋台に遭遇。つい中に入って生カキとカキの蒸し焼きを、これまたたらふく食べる。もちろんお酒も飲んで3人で23000ウォン(1840円)。1人600円ちょっと。安すぎる!