善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

山口晃 親鸞全挿画集

親鸞全挿画集」(山口晃)青幻舎刊
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今、注目の画家、山口晃の画集というので手にとる。

695ページにも及ぶ大型本。片手で持っているとつらいほどの重さ。しかし、ページを開き出すと止まらずに一気読み。いや挿画だから一気見というべきか。

親鸞」は2008年から14年の完結まで足かけ7年にわたって連載された五木寛之新聞小説。全国約40の地方紙に連載されたが、山口晃はその挿画を全1052回分担当。その挿画全点とともに、ボツのものや山口自身が気に入らず差し替えになった絵、ラフスケッチなどを収録。山口の「絵解きコメント」も付け加えられている。

連載が始まる前は五木からは「思う存分にやってください」と言われ、その言葉どおり思う存分に描いていたら、五木から「親鸞の顔は描くな」とか「ものには限度がある」と注文が次々に入り、けっこう苦労したらしい。

それに原稿執筆が遅れて締め切りギリギリで描かなければいけないこともあったようだ。

それでも挫けず、果敢に新しい境地にチャレンジ。水墨画風、四コマ漫画風、版画風、駄洒落ネタなどなど、山口ワールドが炸裂している。

何たって毎日続くのだから、同じ画風の絵じゃつまらないと思うのも当然だろう。

スックとたつレスラーが登場したり、区役所の転入転出課の風景(なぜかこれはボツ)、平清盛カルタ、回答用紙風、熱い体をサーモグラフィックにしたり、栄養ドリンク剤「トリモドS」、歌謡曲の歌詞を創作し、舞台のセットをうしろからのぞいたり、目をつぶって描いたり、ママチャリに乗る登場人物やエプロン奥様風、ラジオ体操風景、最後の回は芝居のカーテンコールみたいに登場人物全員がにこやかに手をつないで「ありがとうございます」

 
こうして挿画だけを追っていっても親鸞の生き方が何となくわかるから不思議。

ときに抱腹絶倒しながら、挿画の世界を満喫した695ページだった。