善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

麿赤兒の「荒野のリア」

きのう(15日)は吉祥寺シアターティーファクトリー公演「荒野のリア」を観る。
原作はシェイクスピアの「リア王」。そういえば今年はシェイクスピア没後400年。
ティーファクトリー公演は今年の春も白石加代子主演の「愛情の内乱」を観ていて、なぜか2回連続。

19時30分開演というので、駅から劇場までの道すがら、台湾料理の店があったので小籠包、大ぶりカキフライ、海鮮焼きそば、それにビールと紹興酒で腹ごしらえ。
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吉祥寺シアターの前に貼ってあったポスター。
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200人近くは入るだろう座席は満員で、女性(それも若い)が多い。出演者が若手中心だからだろうか。
チケットにB列の10番とあるので探すと、ナント最前列の真ん中の席だった。

リア王を演じるのは麿赤兒。舞踏家であるとともに役者でもあるが、1943年生まれというから今年73歳。
原作はシェイクスピアリア王」(松岡和子訳)だが、構成・演出は川村毅というのでかなり現代風にアレンジしているのかと思ったら、セリフはすべて原作のまま。
ただし、舞台装置や衣裳、小道具、役者の動きは“現代風”。

リア王麿赤兒はステテコに腹巻の寅さん風で、その上にマントを羽織ってリア王らしくしている。
騎士の剣も金属バットだった。

物語は第3幕の荒野の場面以降だが、話には前段があって、3人の娘をもつブリテン王リアは長女と次女の甘言にのり領地を与える一方、必要以上のことはいわない素直で純真な三女のコーディリアの物言いには激怒し、追放してしまう。しかし、頼りにしていた長女、次女に次々に裏切られ、リアは失意に沈む。
そして第3幕、次第に狂気に取りつかれるリアは道化とともに荒野をさまよう。
一方、フランス国王に嫁いでいたコーディーリアは軍をひきいてリア救済のためブリテン国にくるが、フランス軍は敗れ、コーディーリアは殺される。リアはそのショックのため視力を失い、やがて絶命する。

1幕、2幕をすっ飛ばしていきなり3幕から始まるので登場人物の相関図がまるでわからず戸惑うが、セリフはテンポよく進んで、そのへんにあったもので工夫したらしい衣裳や小道具が意外と楽しく、中世の過去と現代とが入り交じったような感覚にとらわれる。
麿赤兒の深いしわと光り輝く頭は、もうそこにいるだけで存在感がある。
しかも最前列のど真ん中の席だけに、まるで彼と対峙しているみたい。

芝居をかぶりつきでみる魅力は、観客自身が芝居の中にグイグイと引き込まれることだろう。後ろからだと客観視してみる芝居も、かぶりつきだと自分までも役者の気分になる。いい面、悪い面、両方あると思うが・・・。

芝居の中で、頭に花飾をつけた麿赤兒が少女のように踊る場面合があった。さすが舞踏家だけにうまい。
毎年11月、地元の善福寺公園を会場に「トロールの森」というアートイベントがあり、今年も予定されているが、パフォーマンス部門で現代舞踏家の大坪光路さんの踊りがある。
その大坪さんの踊りと、麿赤兒の踊りがそっくりだった。
麿赤兒は1972年に大駱駝艦という舞踏集団を旗揚げし、それに加わったのが大坪さんだった。二人の踊りの基本には共通したものがあるのだろう。

ところでいつも会場に入るとドサッと大量の芝居告知のチラシをもらうが、本日気になったのは「劇団ヘコキリス」という劇団名。女性2人が4年前に旗揚げしたというが、トレードマークらしいのがあって、リスが屁をこいている図だった。それでヘコキリス。うーむ。