善福寺公園めぐり

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ラダックの旅 その3 砂漠の国のオアシス

インド最北でチベット仏教が栄えるラダックに着いたその日、アルチ・ゴンパ(ゴンパとは僧院のこと)に続いて行ったのが13世紀ごろに建てられたというツァツァプリ・ゴンパ。

ゴンパといっても、お堂が2つあるだけの無人のお寺で、近くの人が管理しているので声をかけてカギを開けてもらう。

中央にチョルテンがあるだけの小さなお堂。

しかし、壁いっぱいに描かれた曼陀羅が見事だ。

 

もう1つのお堂には千手千眼観音が鎮座。

天井を見上げると、アルチ・ゴンパと同じに中央アジア由来のラテルネン・デッケ(三角隅持ち送り形式天井)。

柱の柱頭もイオニア式の渦巻き模様だ。

このお堂の壁画もすばらしい。

チベット仏教の開祖パドマサンバヴァ(グルリンポチェ)かな?

 

ツァツァプリ・ゴンパからホテルに帰る途中、アルチ村を散策。

菜の花みたいな黄色い花が一面に咲いていた。

紫色のこの花は?

大麦の畑が広がっていた。

大麦はラダックの人々にとっての主食だという。

しかし、今回、ラダックの各地を訪ねてみると、どこも岩と砂の砂漠ばかりで、緑が少ないことを実感した。

インダス川沿いとか人々が暮らす集落の周辺には緑があるが、ほかはだいたい無人の地で、こんな風景だ。

同じようにインドの北にあるヒマラヤのふもとの山岳地帯で、同じチベット仏教の国としてブータンがあり、どうしてもラダックとブータンを比較してしまう。

13年ほど前にブータンに行ったことがあるが、森林が生い茂り、農業も盛んで人々の主食は米(赤米)だった。

ラダックとブータンとではどこがどう違うかというと、気候が違う。

ブータンは気候区分では熱帯モンスーン気候に属していて、照葉樹林文化の圏内にある。照葉樹林ブータンから中国の雲南、台湾、そして日本南西部へと広がる植生であり、この地域一帯には共通した文化が成立しているという。味噌、納豆などの大豆の発酵食品とか、麹を用いる酒の醸造、漆を使った漆器づくりやマユから絹をつくる技法、羽衣伝説や歌垣などは、いずれも照葉樹林文化圏に共通するものといわれている。

一方、ラダックは寒い砂漠気候に属していて、11月から3月ぐらいにかけて長く寒い冬があり、冬の間の気温は氷点下をはるかに下回る。夏になると最高気温は20℃近くまで上昇するが、朝晩は10℃前後まで冷え込むことがある。高地であるため日中の日差しは強く、雨が少なくて年間降水量は100㎜程度という。

ブータンも山岳国家といわれ、北部にはヒマラヤ山脈があるため最高地点は標高7500mにも達するが、首都ティンプーは標高2320mで、南部にいくと標高100mぐらいになる。このためブータンは国土の70%が森林という“森の国”でもある。

 

一方、低地でも標高3000mもあるラダックでは、自然の状態では草木も生えない。そのためインダス川沿いなどで植林が行われていて、植えられているのはポプラやヤナギなど寒さに強い木。いずれも建築材料として利用されているという。

ラダックを旅行中、ヤナギの綿毛(タネ)があちこちで舞っていた。

レーやアルチなど、人が住む地域に広がる樹木や畑などの緑は、砂漠の大地の貴重なオアシスなのだ。

 

ラダックの人々の主食である大麦は中央アジア原産で、世界で最も古くから栽培されてきた作物の1つという。低温や乾燥に強いため、小麦の生産が困難な地域において多く栽培されているのだとか。

ラダックの伝統食としては、大麦を煎って粉にした「ツァンパ」と呼ばれるものをお碗の中でバター茶と練ってつくる「コラック」、ツァンパを大鍋で水とともに練ってつくる「パパ」などを、自家製ヨーグルトなどど一緒に食べることが多いという。

山岳地帯で農地の少ないラダックではヤクなどを飼育する牧畜が盛んでもあるようだ。

もちろんラダックでは小麦も栽培されている。

ラダックでよく食べられる麺料理に「トゥクパ」というのがある。一般的には「トゥクパ」は汁物料理全般をいうらしいが、要するに“チベット風うどん”のことで、小麦粉を練って薄く伸ばして麺にしたものを羊肉や野菜を煮込んだスープで食べる。

 

ラダックではかつてはソバ(蕎麦)も栽培されていたらしい(あるいは今も栽培しているところがあるかもしれないが)。

ラダックの人たちが古くから食べていたのはダッタンソバだという。特に3500m以上の高地で栽培していて、大麦と混ぜて食べていたようだ。

ダッタンソバはモンゴルに住むタタール(韃靼)人が好んだことでその名がついたといわれるが、寒冷性が強く、やせた土地でも生育するので、標高が高い地域で食用・肥料用に栽培されてきたという。

ソバにはほかにフツウソバという品種があり、ふだんわれわれが食べているソバがこれだが、原産地は中国のチベット雲南省ではないかとされている。ダッタンソバは中国南部からヒマラヤの山岳地帯が原産地といわれていて、その中にはラダックも含まれていたかもしれない。

 

道端に置かれていたのは建材用のヤナギの木。

ヒマラヤの雪解け水が勢いよく流れていて、農地を潤している。

住宅の窓からおばあさんが手を振ってくれた。

農作業中か、ただおしゃべりしてるだけか?

道端に置かれたカッコイイ子ども用の自転車。

タルチョで飾ってあった。

お父さんと子どもたち。

ジュレー」と挨拶するとニッコリしてくれた。

 

ホテルでの夕食に出たのは、チベット風うどんの「トゥクパ」。

スープはピリリとのどにからく、ちょっとインド風でもある。

やはりラダック料理なのか、揚げポテト。

ホウレンソウとチーズのパラクカレー、レンズ豆のダルカレー、エッグカレー、それにナンは完全にインド料理風だった。

野菜のサラダと甘いデザート。

かくてラダックの旅2日目は終わる。

(つづく)