善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「都会のアリス」「復讐の荒野」

フランス・ボルドーの赤ワイン「シャトー・ポルタル(CHATEAU PORTAL)2020」

ボルドーワインのシンボル的存在であるメドックのさらに上をいくオー・メドックに位置するシャトー・ポルタルの赤ワイン。

「オー(Haut)」はフランス語で「上」とか「高」を意味していて、ジロンド河左岸のメドック地区よりさらに上流にあるというのでオー・メドックカベルネ・ソーヴィニヨンに適した土壌とされ、これにメルローを加えたカベルネソーヴィニヨン50%、メルロー50%の本格派ボルドー

 

写真右上の「赤大豆」がおいしい。

ただ茹でただけだが、そのままの味のすばらしさ。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していた西ドイツ映画都会のアリス」。

1974年の作品。

原題「ALICE IN DEN STADTEN」

監督ヴィム・ヴェンダース、出演リュディガー・フォグラー、イェラ・ロットレンダー、リザ・クロイツァーほか。

 

ドイツ人青年フィリップ(リュディガー・フォグラー)は、ドイツの新聞社に旅行記事を書く約束でアメリカにやってきて、ポラロイドカメラで写真を撮りながら東海岸をさまようものの、一向に原稿が書けないままでついに旅行費用も底をついてしまう。

帰国を決意した彼が空港で出会ったのは、同じくドイツに帰ろうとしている子ども連れのリザ(リザ・クロイツァー)。空港ではストのため足止めを余儀なくされ、ようやく飛行機が飛ぶことになると、リザから9歳の娘アリス(イェラ・ロットレンダー)をひと足先にアムステルダムに連れて行ってほしいと頼まれ引き受けるが、アムステルダムに着いていくら待てども母親は現れない。

フィリップはアリスを車に乗せ、彼女の記憶にある祖母が住むというドイツのヴッパタールに向かい、2人の彷徨が始まる・・・。

 

不思議の国のアリス」はアリスが好奇心の赴くまま摩訶不思議な体験を次々と重ねていく物語だが、「都会のアリス」では、フィリップはアメリカで旅の目的を失い、アリスとの旅でもめざす祖母の家は見つからずに終わってしまう。結局のところ旅とはそういうものだといいたかったのだろうか。

劇中には、ロックンロールの創始者といわれる伝説のミュージシャン、チャック・ベリーのコンサート・シーンがあり、彼が歌っているのは「メンフィス・テネシー」という曲。

男が電話の交換手に「メンフィスにいるマリーにつないでくれ」と頼む曲で、「ぼくに電話をくれるのは彼女だけなんだ」なんていうから、離れ離れになった恋人のことかと思いきや、最後の最後にマリーとは昔別れた女性との間に生まれた6歳の愛娘だったというオチで終わる。

孤独な男の人生を歌っているようで、何だか本作のテーマを暗示しているみたいだった。

 

パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」の監督でもあるヴィム・ヴェンダースは、ロードムービーの名手としても知られ、本作は「ロードムービー3部作」の第1作。本作に続き、翌1975年には小説を書くため旅に出た男が途中知り合った人たちと連れ立ってさまよう「まわり道」、1976年には古いキャンピングカーで各地を転々とする映写機の修理技師の姿を描いた「さすらい」を発表している。

小津安二郎監督の影響を受けていて「東京物語」のオマージュ作品であるドキュメンタリー「東京画」(1985年)を製作。最新作は、安藤忠雄伊東豊雄隈研吾坂茂槇文彦といった世界的に活躍する建築家やクリエイター16人が渋谷区内の公衆トイレ17カ所をリデザインするプロジェクト「THE TOKYO TOILET」とタイアップして、トイレ清掃員役の役所広司主演の映画をただいま製作中という。

 

ついでにその前に観た映画。

NHKBSで放送していたアメリカ映画「復讐の荒野」。

1950年の作品。

原題「THE FURIES」

監督アンソニー・マン、出演バーバラ・スタンウィックウォルター・ヒューストンウェンデル・コーリイ、ジュディス・アンダーソンほか。

 

ニューメキシコを舞台に、大牧場主をウォルター・ヒューストン、その娘をバーバラ・スタンウィックが演じるアンソニー・マン監督の西部劇。

広大な牧場を経営するTC・ジェフォーズは、目的のためなら手段を選ばない独善的な男で、娘のバンスも父親にそっくりな性格だった。TCは娘に牧場を継がせるつもりだったが、バンスが結婚相手に選んだのは、かつてTCが土地を奪うために殺した男の息子で実業家のリップだった・・・。

 

西部劇には珍しい心理劇。それで敬遠されたのか日本では劇場未公開。

さらにこの映画には正義の味方のヒーローはいない。

主要人物の1人、牧場経営者のTCは独善的な男で、自分の土地を広げることに躍起となっていて、「王」を僣称して無許可で住んでいるという理由で家を焼き払ったり、住人を縛り首にしたりする。

映画のヒロインであるTCの娘も、父親に似て勝気で、牧場を自分の思うままにしようとして、父親の宿敵の息子で実業家の男と結婚しようとするなど父と対立する。

ヒロインの相手役となる男も、かつて父親がTCによって殺され土地を奪われたことから復讐に燃えていて、TCの娘を平気で裏切ったりする。

そんな3人が織りなす“復讐劇”。原題の「THE FURIES」とはギリシア神話に登場する「復讐の女神(頭髪はヘビで翼があり、手にムチとたいまつを持つ3姉妹)」を意味し、王を僣称するTCが所有する広大な土地の名前が「THE FURIES」というのだった。

TCは最後に、土地を追われ息子は縛り首となったメキシコ人の母親が放つ銃弾により殺されるが、鬼気せまる感じのあの母親こそTHE FURIES、つまり復讐の女神だったのではないだろうか。