クリント・イーストウッド監督の最新作「リチャード・ジュエル」を観る。
土曜日の新宿ピカデリー。
新型肺炎を心配して、新宿はマスクの人だらけかと思ったがそれほどでもなかった。
1996年のアトランタ爆破テロ事件を描いたサスペンスドラマ。
五輪開催中のアトランタで、警備員のリチャード・ジュエルが公園で不審なバッグを発見する。中身は無数の釘が仕込まれたパイプ爆弾だった。
とっさの判断により多くの人々の命を救い一時は英雄視されるジュエルだったが、その裏でFBIはジュエルを第一容疑者として捜査を開始。それを現地の新聞社とテレビ局が実名報道したことで、ジュエルを取り巻く状況は一転。
何の証拠も得られないまま、「第一発見者=犯人」などのプロファイルだけを頼りにジュエルへの疑いを加速させるFBI。
メディアは連日の加熱報道を繰り返し、ジュエルの人格は全国民の前で貶められていく。そんな中、ジュエルと彼の無実を確信した弁護士ブライアントが立ち上がる。ジュエルの母ボビも息子の無実を訴え続けるが……。
エンディングに流れた曲が素晴らしかった。トランペットとヴァイオリンの曲だったが、音楽を担当していたのはキューバ出身のジャズ・トランペット奏者で、レコーディング・アーティストとしても知られるアルトゥーロ・サンドヴァルだった。サンドヴァル自身がトランペットを吹いていたのだろう。
そういえば彼はイーストウッドの前作の「運び屋」でも音楽を担当して、全曲を作曲したという。
「運び屋」のとき、イーストウッドからのオファーを受けたサンドヴァルは、楽曲を1曲書くことを頼まれるんだろうと思って会いに行ったという。
イーストウッドは彼にまず映画全編を観せた。するとサンドヴァルは、持ってきたポータブル・キーボードで数曲を即興で演奏した。その曲を聞いたからかすでにそうと決めていたからなのか、イーストウッドはその場で、「君に(全体の)スコアを書いてもらいたいんだ」と依頼。サンドヴァルは迷うことなく承諾したとのエピソードが残っている。
監督と作曲家の出会いのシーンを想像するだけでもワクワクしてくる。
とても心地よく癒される曲だった。