善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

家族はつらいよ

きのうは大泉学園にあるT・ジョイ大泉で山田洋次監督の『家族はつらいよ』を観る。
朝9時開始の第1回。客は高齢者中心にチラホラ。

山田監督が『男はつらいよ』シリーズ終了から約20年ぶりに手がけた喜劇、というので観に行く。
小津安二郎のオマージュで作った『東京家族』の現代版という感じで、あの映画とまったく同じ家族構成で配役も同じ。
出演は橋爪功吉行和子妻夫木聡蒼井優ら。

結婚50年が間近の老夫婦(橋爪功吉行和子)。夫はサラリーマンを定年退職し、悠々自適の毎日。ゴルフに酒が好きで、家に帰れば服は脱ぎっぱなし、靴下も放りっぱなしで、威張っている。妻はカルチャースクールで小説の書き方を学んでいて、空想の恋の世界に思いをはせる日々。
ある日、夫がゴルフのあと酒を飲んで酔っぱらって帰ってくると、その日は妻の誕生日だった。
すっかり忘れていた夫が、誕生日に何がほしい?と聞くと、答えは「離婚届」への署名だった。
そこから家族を巻き込む騒動へと発展していく。

最後のほうの蒼井優のセリフが監督のいいたいことだろう。
「スマンとか、ありがとうとか、そんなこと言わなくたって伝わるものはちゃんと伝わるんだ」という夫に、次男の恋人の蒼井優は言う。
「言葉で伝えなきゃだめなんです!」

この映画を見た世の亭主はきっと肝を冷やしたに違いない。
そして家に帰ったその日は、奥さんにやさしい言葉をかけるに違いない。
かくいう私も・・・。

心に残るシーンがあった。
夫婦は長男家族と同居していて、中学生と小学生の男の子の孫がいる。
中学生の孫の野球の試合で、9回裏、サヨナラのチャンスにバッターボックスに立つ。
応援していた小学生の孫が家に電話をかけると、電話に出たのが夫に離婚を迫った妻。
孫が兄の様子を電話の実況中継で伝える。
「あっ、お兄ちゃんが打った。すごい、ホームランだ。サヨナラだ。みんな大喜びだよ!」
孫の電話にジッと耳を傾ける祖母。

見ていてウルッときた。
このシーン、離婚をめぐる話のスジとは関係ない、何てことないシーンのようだけど、妻の心の変化をとらえた、映像だからこその説得力のあるシーンなんだな。「家族っていいな」ってことをああいう描き方で表現するのが山田監督。監督の思いがあの場面に凝縮されている気がした。
ああ、映画ってすばらしい。

ホームランを打った孫の役をしていたのは歌舞伎役者の中村鷹之資。まだ15歳か16歳ぐらいだから若手も若手。父は名優・中村富十郎。何年か前に亡くなったが、富十郎69歳のときに生まれたのが鷹之資。将来は富十郎を襲名するのだろう。

うなぎ屋の出前で出ていた役者は徳永ゆうき
濃い顔だちなのですぐにわかったが、たしかNHKののど自慢大会で優勝し、演歌歌手になったはず。
映画にも出ているんだね。