善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

死んだ女の子

元(はじめ)ちとせが歌う『死んだ女の子』を聞く。
とてもいい歌だったが、私が昔聞いて自分も歌った『死んだ女の子』とはメロディーが違っていた。
作詞というか原詩はトルコの詩人ナジム(あるいはナーズム)・ヒクメットだが、作曲は外山雄三だった。
私が知っているのは木下航二作曲で、ヒクメットの詩を訳したのは飯塚広だった。

歌詞は以下の通りだ。

とびらをたたくのはあたし
あなたの胸に響くでしょう
小さな声が聞こえるでしょう
あたしの姿は見えないの

十年前の夏の朝
あたしはヒロシマで死んだ
そのまま六つの女の子
いつまでたっても六つなの

あたしの髪に火がついて
目と手が焼けてしまったの
あたしはつめたい灰になり
風で遠くへとびちった

あたしは何にもいらないの
誰にも抱いてもらえないの
紙切れのように燃えた子は
おいしいお菓子も食べられない

とびらをたたくのはあたし
みんなが笑って暮らせるよう
おいしいお菓子を食べられるよう
署名をどうぞしてください

ヒクメットはトルコで社会派詩人として活動していたが、トルコ政府の弾圧にあって当時のソ連に亡命。1963年、61歳で異国の地に客死したという。
10何年か前、トルコのイスタンブールに行ったとき、ヒクメットについて何か知らないかと通訳の人に聞いたが、知らないとの答えで、トルコでは忘れられた人だったのかと、とても残念だったのを覚えている。

木下航二がこの歌を発表したのは1957年、原爆投下から12年がたっていた。すると詩ができて2年後にこの歌が生まれたのだろう。
当時彼は都立日比谷高校の社会科教師をしていて、『原爆を許すまじ』の作曲者でもある。