善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

「アメリカン・スナイパー」と殺された子ども

きのうは大泉学園にあるTジョイ大泉で先週封切ったばかりの『アメリカン・スナイパー』をみる。
10時55分からの最初の回。お客さんは少なく、年配の夫婦連れが目立つ。

イラク戦争に4度従軍し、160人を射殺したという“アメリカ最強のスナイパー”、アメリカ海軍特殊部隊ネイビーシールズ所属のクリス・カイルの自叙伝を実写化したドラマ。
結局、英雄伝説の物語だった。

しかし、監督のクリント・イーストウッド氏にとっては英雄でも、万人にとって英雄だったかどうか。そこのところに違和感が残った。

だってアメリカ国内の話ではない。何万キロも遠く離れた外国にまで出かけていって、そこの国の人間を次々と殺していくことが英雄なのか?

映画の冒頭、保育園か幼稚園に通うぐらいの年齢の子どもが、母親かあるいはお姉さんらしい人から渡された爆弾を抱えてアメリカ軍の戦車に向かっていくところを、遠くから狙撃するシーンが出てくる。
一瞬のことではない。この子は危険な人物なのか?と逡巡する時間はある。危険と察知したら、大きな声をあげて警告することだってできた。無線で連絡する方法もあったろう。何しろ戦場でドンパチやりながらアメリカにいる奥さんと携帯電話で会話するシーンが出てくるくらいだから、通信条件は整っていただろう。
威嚇の発砲だっていい。石を投げたっていい。
それをやらずに主人公は子どもの心臓をねらって一発で仕留めている。

どんな理由であっても、背後から狙い撃ちで幼児を殺していいものなのか。それを160人の1人と数えていいものなのか?
主人公は殺した相手を“蛮人”と呼んでいるが、あの、子どもを射殺したシーンはまるで映画を見ている私たち日本人の子どもが殺された気がして、戦慄が走った。