善福寺公園めぐり

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初芝居は「通し狂言 南総里見八犬伝」

このところ正月の初芝居は国立劇場菊五郎劇団。今年も松の内の6日に行く。
演目は「通し狂言 南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)」6幕9場(27日まで)

入口ホールでは大きな鏡餅の前で恒例の獅子舞。
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縁起物の頭をかじるポーズも。
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原作は江戸後期の戯作者、曲亭馬琴の長編小説(読本)。28年の歳月をかけて、馬琴は失明しながらも口述筆記で書き継いで、ようやく完成したという。2014年は刊行開始から200年となるというので企画されたのが今回の芝居。
しかし、28年かけて書いた長編小説を、わずか3時間あまりにまとめるのだから大変。お客さんはある程度この物語について知っているからいいものの、かなり駆け足の芝居となった。
したがって、情感タップリの場面よりも、飛んだりはねたりの活劇が目立つ。それもまた正月らしくて華やかでいいといえばいいが。

105年ぶりの上演となるという「白井城下の場」では犬山道節に扮する菊五郎の火遁の術がすさまじく見事。
紅蓮の炎は客席にまで飛んできて、頭から降りかかったのがこれ。
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「芳流閣の場」では犬塚信乃の菊之助と犬飼現八の松緑との大立ち回り。
かつて菊五郎と亡くなった団十郎がこの大立ち回りを演じたというが、菊之助松緑の立ち回りもなかなか凛々しくていい。これなら歌舞伎の将来も安泰と思った場面だった。

松緑のせがれで、昨年6月の歌舞伎座「6月大歌舞伎」で襲名披露した尾上左近が立派に成長。たしか今年9歳になるはずで、観客の拍手を一身に集めていた。

犬田小文吾をやった阪東亀三郎。声の響きがいいねー。

菊五郎はさすがの演技だが、すぐに用意された台に座ってセリフをいうのはやっぱり年なのか。

しかし、何といっても菊之助。特に「足利成氏館の場」で花道から出てきただけでもううっとり。衣装がまた匂い立つよう。ピンクの着物に白の肩衣、裏地は薄緑というか薄い青。月代も青々として、もうただそこにいるだけで見とれてしまう。これぞ歌舞伎役者。

もう1つ、特筆すべきは「芳流閣の場」での大立ち回りの附け打ち。舞台上で芝居に「音を付ける」からこう呼ばれるが、ケヤキの附け板の上を白樫(しらかし)でできた附け木でもってバタンバタンと叩く。特に立ち回りなどで、役者の動作やしぐさを強調するための歌舞伎独特の演出の1つ。
「芳流閣の場」での大立ち回りは休みなしに延々と続くから、附け打ちも休みなし。ひょいと見るとそれをけっこうなお年の人がやっていた。実に見事だった。
パンフレットを見ると「渡辺恒」と書いてあったので調べたら昭和23生まれというから60代半ば。年季が入っているからこそのワザなのだろう。

[観劇データ]
2015年1月6日 国立劇場大劇場
通し狂言 南総里見八犬伝
12時開演
1階8列31番