善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

「通し狂言 しらぬい譚」のスペクタクル

今年の初芝居は国立劇場の「通し狂言 しらぬい譚」。
松の内はすぎたが、劇場内はいまだ正月という感じで、巨大な鏡餅が飾られてあった(エビは作り物)。
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ロビーも正月っぽい。この日は成人の日の休日で、客席は満員だった。
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原作は江戸時代に人気を博した絵入りの長編小説(合巻(ごうかん)の中でも最長編といわれ、全90編に及び3人の作者が30年にわたって書き継いだ『白縫譚(しらぬいものがたり)』。
中里介山の大長編小説『大菩薩峠』よりスゴイ。

その内容はというと、江戸時代初期に起きた筑前国黒田家のお家騒動を主な題材にして、黒田家をモデルにした菊地家が、菊地家に滅ぼされた豊後国大友家の忘れ形見・大友若菜姫の妖術によってお家存亡の危機に陥り、菊地家の執権・鳥山豊後之助が若菜姫と対峙するという物語。
若菜姫は土蜘蛛の精から蜘蛛の妖術を授かり、さらに足利将軍家に復讐しようとする怪猫とも結託して騒動を起こすが、最後はめでたしめでたしで幕となる。

国立劇場では1977年(昭和52年)に河竹默阿弥が劇化した『志らぬひ譚』を通し狂言として76年ぶりに復活上演したが、今回は菊五郎監修のもとかなり元の作品を換骨奪胎して、新たな台本で臨んだという。


冒頭の「若菜姫術譲りの場」がファンタジック。
海女すずしろ(菊之助)が海の中で土蜘蛛の精から蜘蛛の妖術を授かる場面。実は彼女は菊池家に滅ぼされた大友家の忘れ形見。お家再興と菊池家への復讐を誓う若菜姫。このあたりは天竺徳兵衛の忍術譲り場と瓜二つ。
この場面の海の中の描き方がすばらしかった。
タコの足みたいなのがゆらゆらと漂っていて、まるでホントに海の中にいる気分だった。

2幕目の「博多菊池館奥庭の場」では若菜姫の菊之助宙乗り
しかもただの宙乗りじゃなくて、舞台下手あたりから上手側の2階観客席のはずれまで斜めに空中を飛んでいく筋交い宙乗り。前から4列目の真ん中あたりに座っていたので目の前を菊之助が飛ぶというより漂っていく。その美しく怪しげなこと!

大詰の「島原の塞の場」でも菊之助の筋交い宙乗りがあったが、このときの巨大な波の演出も見事。巨大な布を使った演出だが、本当に舞台の上で大波が押し寄せているような雰囲気となった。

このほか、怪猫退治の大立ち回りや屋台崩しなど、正月らしい華やかな舞台だった。

最後は出演者が1列に並んで見得を切ったあと、恒例の手拭い投げ。
国立劇場開場50周年」と染め抜かれた特製手拭いゲット。
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