善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

ひまわり

きのうのBSで何十年ぶりかで映画『ひまわり』を観る。やっぱり泣けた。
監督ビットリオ・デシーカ、主演はマルチェロ・マストロヤンニソフィア・ローレン、音楽がヘンリー・マンシーニ
1970年の作品というから40年以上前につくられたもの。

結婚式を挙げて幸せいっぱいのアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)とジョバンナ(ソフィア・ローレン)。しかし、時は第二次世界大戦が真っ最中のころ。アントニオに召集令状が来て、「狂人」を装って兵役忌避したのがバレて、極寒の地のロシア戦線に。
やがて戦争は終わったが、アントニオは帰って来ない。待ち焦がれたジョバンナはとうとうソ連にまで出かけていく。
地平線いっぱいに咲くヒマワリの花。ソ連外務省の役人に連れられてやってきたジョバンナは、無数の墓が並ぶ墓地に立つ。
村人たちによれば、ロシア人の捕虜や農民たちはドイツ軍の命令で自分の墓穴を掘らされ、そこで殺された。その上に咲いているのが一面のヒマワリだという。

イタリア人戦死者への記念碑に刻まれたロシアの詩人スエトロフの詩が紹介される。

ナポリの息子よ
なぜ君はロシアの野に来たのか
故郷の湾にあきたのか
ラホストークで君はベスピオの山を想っていた

そしてジョバンナはアントニオと再会する。
敗残兵となり、その列からも脱落したアントニオは、あわや凍死というときに地元の少女(リュドミラ・サベーリエワ)に助けられ、彼女と暮らすことになり、子どもももうけていた。

最後にミラノ駅でのアントニオとジョバンナの別れのシーンが悲しい。
ウィーン行きの列車の窓から、無言で顔をのぞかせるアントニオ。やはり黙って見送るジョバンナ。やがて1人残されたジョバンナの姿がだんだん小さくなって、そして列車も遠くへと走り去っていく。

このシーンを見て、フランス映画の『シェルブールの雨傘』を思い出した。
あの映画でも、愛する2人を引き裂いたのは戦争だった。
ギイ(ニーノ・カステルヌオーボ)とジュヌビエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は愛し合い、ジュヌビエーヴは彼の子どもをおなかに宿す。ところがギイはアルジェリア戦争に引っ張られていく。
駅での別れのシーンがいい。
「モーナム」「ジュテーム」の、セリフはこの2つだけ。(ミュージカルだから歌っているんだが)

ところが、彼がいない間に、寂しさに耐えかねたジュヌビエーヴは宝石商の男に執拗にプロポーズされ、ついにその男と結婚してしまう。

そして、最後のシーン。
ギイも別の女性と結婚し、子どももできて、ガソリンスタンドを経営している。
雪が降りしきるクリスマス・イブの晩、そのガソリンスタンドに、なんと子どもを連れたジュヌビエーブが車でやってくる。
二言、三言の会話しかない再会。やがてジュヌビエーヴは去っていく。

そのあとに(このあたりからカメラはだんだん引いていく)、外出していた彼の妻と子どもが帰ってくる。雪の中の3人がやがて家の中に消えていくところを遠景でとらえ、音楽が高鳴って、物語は終わる。

両方とも、心に残る名シーンだ。