善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

金の星社 漫画家たちの戦争 全6巻

金の星社『漫画家たちの戦争』(全6巻)を読み終える。

戦争をテーマにした漫画作品を集めたもので、「原爆といのち」「子どもたちの戦争」「戦争の傷あと」「戦場の現実と正体」「未来の戦争」などテーマ別に構成されている。
作者は、手塚治虫ちばてつや赤塚不二夫貝塚ひろし辰巳ヨシヒロ永島慎二西岸良平滝田ゆう藤子・F・不二雄、梅図かずお、白土三平松本零士水木しげる石ノ森章太郎諸星大二郎弘兼憲史秋本治などなどそうそうたる顔ぶれ。

どれも力作で、胸に迫るものがある。
戦争を憎み、軍国主義を許さない姿勢を貫く日本の漫画家たち。
たくさんの子どもたちに読ませたいシリーズだ。

読んであらためて「漫画の力」というものを感じる。
戦争の現実は悲惨で凄惨だ。特に広島の原爆を描いた中沢啓治の「おれは見た」は、作者自身の体験をもとに描いているだけになおさらだ。しかし、本書の巻末で監修者の中野晴行氏が述べているように、どんな悲惨な現実も、過酷な体験も、漫画だからこそリアルに描き出せる。人に感動を与え、真実を見る目を養ってくれる。

心に残った作品がいくつかあるが、初めてその存在を知ったのが比嘉慂(すすむ)という作家。
沖縄で生まれ育ち、沖縄戦基地問題などを題材に作品を描いているらしいが、本シリーズには「母について」という作品が掲載されている。

子供3人と乳飲み子を抱えて、防空壕からお墓の穴の中まで、命がけで子どもたちを守った母親の物語。
素朴な細い線、静かで抑制された描き方。独特の雰囲気を感じる。その抑制された描き方がむしろ生々しいドキュメンタリー効果を生む。
ほかの作品も読みたくなった。

石坂啓の「八月の友人」。空襲で親を失い、田舎の親戚に引き取られた少年の物語。

転校した国民学校で朝鮮出身の男の子と仲良くなるが、その男の子と家族は日本人から差別的な扱いを受けていて、その子を最後に見たのは、天皇御真影教育勅語がおさめられている奉安殿への敬礼のしかたが悪いと教師からこっぴどく殴られていたときで、少年は友人のはずのその子をかばうこともできず、立ちすくむだけだった。

やがて少年は成長し、家庭を持ち、会社の課長になっているが、毎年8月になると、救えなかった男の子の姿がよみがえってきて、その子を見失うまいとしている少年のころの自分がいる。少年にとって戦争は、きっと生涯にわたって続いていくのだろう。