善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

イヌビワの黒い実

火曜日朝の善福寺公園は曇り。つい2、3日前までは降るようだったセミの声がまるでしない。むしろ秋の虫の声がにぎやかだ。帰るころになってようやく鳴き出す。

上池のイヌビワの実。赤かったのが黒くなっている。
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植物の赤は、極まると黒になるという。黒は色素成分であるポリフェノールの一種、アントシアニンの色だ。

植物の多くは熱帯起源だ。その熱帯で生き抜くためには、太陽のエネルギーを体いっぱいに吸収するとともに、紫外線の害、強烈な太陽光線による酸化の害から自らを守らなければいけない。
そこで、次代に命をつなぐ植物の実は、抗酸化作用を発揮するアントシアニン、つまり黒の色素で身を守るようになったのだ。

だから、野生種の植物は黒い実をつけるものが多い。米にしても、今のわれわれが食べているのは白米だが、それは人間が手を加えた栽培種であり、本来は赤米、黒米だった。

ゴマも、もともとは黒ゴマで、白ゴマは黒ゴマから突然変異で生まれたものという。インゲンマメもトウモロコシも、元来は黒い色だったという。

植物の黒は、じっと見つめていると実は真っ黒ではないことに気づく。どこか赤みがかったり、紫がかったりする。

われわれが黒い色を用いるときも、黒は決して単調な黒、単に光を吸収して動かない死んだ色ではないという。
黒色の染め物でも染料によって色合いが違ってくる。
「紅下黒」「藍下黒」という特別な黒色の呼び名があり、それは、黒染めの下染めとして濃紅なり濃紺に染め切ることをする。すると鮮やかな黒色があらわれてくるという。

「黒は多くの色彩があるために美しいのである」とは、染織家の岡村吉右衛門の言葉だ(『日本の色』(朝日選書)より)

帰りに善福寺に寄ると、朝露に濡れて酔芙蓉が今を盛りと咲いている。
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