善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

ソウル散歩(続きの続き) 食考

旅は食にあり。せっかくソウルの旅について書いたのだから、食についても触れておこう。

今回の旅の料理で一番おいしかったのが、朝食に食べたチゲ鍋だった。ホテルの近くにチゲ鍋の専門店があり、早朝から営業している。鍋にキムチをベースにした真っ赤なスープが用意されており、そこに肉やら野菜やらを入れて、箸でつっつき合う。〆はインスタントラーメンで、煮込むほどうまかった。
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韓国というと、キムチもそうだが、唐辛子をふんだんに入れた辛い料理を連想しがちだが、実際はそれほど辛くなかった。キムチにしても、日本ほど辛くなく、むしろうまみを感じる。
それは原料の唐辛子が違うんだそうである。そこで、タネだか苗だかを日本に持って行って栽培したが、1年目はそれなりの唐辛子ができたものの、2年目からはダメだったとかいう話を聞いた。気候や土壌が違うからなのだろう。

本当の韓国料理を食べようと思ったら、やっぱり本場に行かなくてはだめだ。
でもやっぱり辛いことは辛い。なぜ韓国の人たちはこれほど辛い料理が好きなのだろう。

それから、ソウルで食べた料理はどれも肉中心で、野菜は少なかった。野菜はあっても肉に巻くサンチュとか、添えもの程度で、野菜がメインとはならない。焼肉とかサムギョプサル(豚の焼肉)とか、そういうメニューばかりを選んだためかもしれないが、野菜といえばキムチぐらいしか記憶がない。

もともと韓国人は北方の騎馬民族にルーツがあるとの説があり(それが日本にも流れ込んできている)、北方系民族の特徴として、肉を多食し、その記憶が遺伝子に刻まれたのだろうか。
野菜が豊富に採れる熱帯とその周辺では、当然、野菜が中心の食事(主食はコメとかにしても)であり、北に行って野菜が採れなくなるところほど、肉食が増えていく。肉は野菜の代用にすぎない、との説もある。

極端な話、極北のイヌイットの主食はアザラシとかの動物の生肉であり、野菜はジャガイモなど限られたものでしかない(今は違うだろうけど)。それでも、栄養的にはそれで十分な体になっており、それは何千年の時をへて、順応したおかげに違いない。
辛いものが好きというのも、決して好みの問題なのではなく、生きていく上で必要だったからなのだろう。

そういえば、世界一辛い料理といえばブータンだが、以前、行ったとき、たしかにチョー辛かった。
ブータンの主食は米(中でもいちばん食べられているのが赤米、私たちが口にする白米の元祖でもある)。米を煎ったり、つぶしたりしてオヤツに用いる米の加工品も多い。
そして野菜の筆頭が唐辛子だった。香辛料とかそういう扱いではなく、食卓にのぼるメインの野菜が唐辛子なのだ。

ブータン人がよく食べるエマダチ(トウガラシのチーズ煮込み)などは、具は唐辛子だけだし、唐辛子を使わない料理はブータン料理ではない、といわれるほど。市場での扱い量のトップも唐辛子だ。
ブータンの市場をのぞくとほかにも野菜はいろいろ並んでいるが、それは最近のことで、昔はほとんど米と唐辛子料理で食事をすましていた。でも、ほかにも乳製品をしっかりとったり、生きていくのに必要な栄養はちゃんととれていたのだろう。

それが民族の知恵というものなのかもしれない。