善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

東京都写真美術館 「光の音」

日曜日の善福寺公園は晴れ。
上池のかたわらにツワブキの花が咲いている。
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葉は蕗(ふき)に似て、ツヤがある。それで「ツヤブキ」から「ツワブキ」になったんだとか。

散歩のあとは東京都写真美術館の「スナップショットの魅力」「ニュー・スナップショット」展へ。
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文字通り、スナップショットを集めた写真展。なぜか2つの会場で別々に開かれている。
前者では、20世紀を代表する著名な写真家から現在活躍中の写真家までの作品を展示。後者では、新進作家の作品が並べられている。

前者の「スナップショット」で印象に残ったのは、1968年、ロバート・F・ケネディジョン・F・ケネディ大統領の弟で司法長官だった)が暗殺され国葬を行うため、NYからワシントンDCに列車で遺体を移動させる際、沿道で哀悼する人々の姿を列車の窓からとらえた作品。ポール・フスコという写真家の作品で題名は「RFK Funeral Train」。日本初公開だとか。

もう1人よかったのは臼井薫とかいう人の作品。たぶん昭和20~30年年代だと思うが、子どもたちの姿を中心にスナップ写真を撮っているが、当時子どもだった身としては何とも懐かしい。
もともと土門拳に師事し、昭和20年代から名古屋で写真店を経営し、今月1日、93歳で亡くなったばかりだそうだ。俳優の天知茂の実兄で、写真家としてはアマチュアを貫き、12冊の写真集はすべて自費出版だという。
今回の展示では、「水溜まりを飛ぶ少年」が気に入った。そういえば昔は道路とか空き地とか、あちこちに水溜まりがあって、よく飛び越して遊んだな。

そして今回の写真展で出会った忘れられない作品が、「ニュースナップショット」に出ていた中村ハルコの「光の音」という作品。

イタリア・トスカーナ地方のおじいさんやおばあさん、その孫らしき人々の日常の暮しを写真に撮っているのだが、アングルといい、自然や人々の表情のとらえ方といい、見るものをひきつける。そして何より、独特で、とろけるような色彩がすばらしい。
あの色は、トスカーナ地方の色なのか、それとも彼女がつくりだした色なのか。

1962年生まれ。日大芸術学部を卒業後、フリーの写真家となり、アフリカなどを旅しながら写真を撮り続け、93~98年にイタリア・トスカーナ地方の風景と生活に魅了され、「光と音」という作品をつくる。その後、自分の子どもの誕生を記録した「海からの贈り物」を発表。いくつもの賞を受賞したという。
ところが05年、膵臓がんにより43歳の若さで亡くなった。

一瞬の光のような感性のほとばしり。しかし、作者はいなくなっても、いつまでも私たちの心に残り続ける。