善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

宮部みゆき 「おそろし」

以前、宮部みゆきの『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』を読んだが、実はこれはシリーズの続編であり、遅ればせながら第1作目の『おそろし 三島屋変調百物語事始』を読む。

あらすじは──
17歳のおちかは、川崎宿で旅籠を営む実家で起きたある事件をきっかけに、他人に心を閉ざした。いまは、江戸・神田三島町に叔父・伊兵衛が構える袋物屋「三島屋」に身を寄せ、黙々と働く日々を過ごしている。ある日伊兵衛は、いつも碁敵を迎える「黒白の間」におちかを呼ぶと、そこへ訪ねてくる人たちから「変わり百物語」を聞くように言いつけて出かけてしまう。そして彼らの不思議な話は、おちかの心を少しずつ、溶かし始めていく・・・。おちかを襲った事件とは──?

連作短編の形になっていて、怪異、面妖な5つの話が、最後には1つにつながり、一応の終止符を打つ。構成は、第1話「曼珠沙華」、第2話「凶宅」、第3話「邪恋」、第4話「魔鏡」、最終話「家鳴り」。

そもそも百物語というのは、日本の伝統的な怪談話の会のスタイルのひとつなんだそうで、新月、つまり真っ暗な夜に集まって、順繰りに怪談話を披露する。100話語り終えると、本物の“怪”があらわれるのだという。そこで実際には99話でやめて朝を迎える。やはり昔の人も怖いものが本当にあらわれてはかなわなかったのだろう。
現代人も夏になると怪談話を聞きたがるが、昔も今も“怖いもの見たさ”は変わらない。

前回の『あんじゅう』はどこか“大人向け日本むかしばなし”っぽくてほのぼのとしていたが、さすがにシリーズ第1作は“怖い話”ばかり。でも、何となく女の子っぽい書き方なので(といっても宮部みゆきもすでに結構な年齢とは思うが)、夜中に1人でも安心して読める。

主人公のおちかは心に大きな傷を持っている。その彼女が、同じように心の傷を持つ人々の話を聞くうちに、ときとして打ちのめされ、自分自身も騒動に巻き込まれながら、だんだんと癒されていくという話。最後の章などは幻想的であり、また哲学的でもあった。

でも1作、2作目でもあわせて10話ぐらい。100話まで書き継いでいくのだろうか?