善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

歌舞伎座六月大歌舞伎 昼の部

歌舞伎座六月大歌舞伎の昼の部を観る。
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演目は「寿式三番叟」「女車引」「梶原平三誉石切」「恋飛脚大和往来 封印切」。
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何といっても吉右衛門の「梶原平三誉石切」」と仁左衛門の「封印切」。時代物と世話物の至芸を堪能。いい芝居を見ると、寿命がちょっとだけ延びた気がする。
 
吉右衛門が演じるのは情と智を兼ね備えた武将、梶原平三景時。若手で応援している米吉が、歌六が演じる六郎太夫の娘、梢で出ていた。吉右衛門歌六相手にいい勉強になっているだろう。
 
仁左衛門が「封印切」の忠兵衛を歌舞伎座で演じるのは1989年(平成元年)以来、実に30年ぶりだとか。
最初、花道から出てくるときはいかにも三枚目ふうで笑わせる。それが物語が進むとともに悲劇の主人公になっていくのだが、恋敵の八右衛門の挑発に乗って、なぜ公金の封印を切ってしまうか、以前、文楽の「冥土の飛脚」をみたときは疑問だったが、きのうの芝居を見ていてその理由がわかった気がした。
2階座敷で隠れて聞いている忠兵衛の存在を知らずに、八右衛門が傾城梅川や井筒屋おえんらに忠兵衛に対する悪口を並べ立てるのだが、こっそり聞いていて忠兵衛がついカッとなったのが、忠兵衛のことを「あいつは田舎のドン百姓の倅。大金が用意できるはずもない」とあざ笑うところだった。それを聞いて堪忍袋の緒が切れて「金ならある!」と飛び出していくのだった。
 
士農工商の時代で、農は工や商よりは上、とはいっても、やはり田舎のどん百姓=貧乏と蔑まされていたのだろう。その差別の現実をあからさまに突きつけられ、忠兵衛はついに我を忘れてしまうのである。
 
忠兵衛が恋慕する傾城梅川に孝太郎、井筒屋おえんに秀太郎、恋敵の八右衛門に愛之助と、松嶋屋一門がそろっての舞台だった。