善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

二月大歌舞伎「名月八幡祭」で降る雨は・・・

歌舞伎座二月大歌舞伎・夜の部を観る。
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昼夜で初代尾上辰之助の三十三回忌追善狂言を上演。初代辰之助は四代目尾上菊之助(現・尾上菊五郎)、六代目市川新之助十二代目市川團十郎)とともに“三之助”と呼ばれ人気だったが40歳という若さで亡くなった。

夜の部の演目は、「熊谷陣屋」「當年祝春駒」「名月八幡祭」。
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「熊谷陣屋」の熊谷直実吉右衛門。さすがの名演技。
菊之助義経も凛々しくてよかった。

「當年祝春駒」は梅玉工藤祐経慶事の門付を行う春駒に姿を変えた錦之助の十郎と左近の五郎の曽我兄弟。左近は松緑の長男、つまり辰之助の孫。2006年生まれだから今年13歳。中学生になったぐらいか。

夜の部の辰之助三十三回忌追善狂言が「名月八幡祭」。主役の縮屋新助をかつて辰之助が演じた。辰之助が2度目に新助を演じたとき(1983年6月)、深川芸者の美代吉は玉三郎、美代吉の情夫、三次は仁左衛門だった。今回、新助は松緑、36年前に美代吉、三次を演じた玉三郎仁左衛門が、追善だからと同じ役で出演したという。
玉三郎仁左衛門のいちゃつくところが秀逸!
玉三郎の自然な演技もよかった。

ところで芝居が始まる前、「名月八幡祭」は本水を使うというので透明のビニールが配られた。前から2列目の真ん中あたりに座ったから、ひょっとすると水がかかるかもしれない。以前も「夏祭浪花鑑」だったか、姑殺しの場面で本水を使って、前の席に座ったものだから水が飛んできたことがあった。
2年前に歌舞伎座で「名月八幡祭」をやったときも本水を使って雨を降らせたという。

それも一興と、いよいよというころにビニールを広げて待っていたのだが、実際は使われたのは本水とはいうものの、ミストだった。
物語のクライマックス、八幡祭の当日に、狂った新助は美代吉を殺そうと人混みをさまよう。
そこへ、大勢の見物客のために永代橋が落ちたとの叫び声。人々が走り去ったあと、夕立がザーッと降る。
雨の中、美代吉の姿を見付けた新助はずぶぬれになりながら追いすがって美代吉を斬り殺すところなんだが、それがミストの霧雨とは、ちょっとがっかり。
真冬の舞台。玉三郎をずぶ濡れにしちゃいけないという配慮だったのかもしれないが、騒ぎに気づいた若者たちに取り押さえられた新助が担ぎ上げられて花道で高笑いする中、誰もいなくなった舞台は雨上がりの風景となり、夕空に十五夜の月が昇る。
ホントに雨を降らせた方がドラマチックだったと思うが。