善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

エクス・マキナ

銀座のエルメス10階のル・ステュディオで映画「エクス・マキナ」を観る。
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ル・ステュディオは40席のプライベートシネマ。テーマを設定して定期的に映画を上映していて、2017年のテーマは「オブジェに宿るもの」。
12月は「人工知能」にまつわる映画を上映しており、そのひとつが人工知能と人間の心理戦を描いたSFスリラー「エクス・マキナ」。
2014年のイギリス映画。原題も「Ex Machina」。

エクス・マキナ」とは、本来はデウスがついて「デウス・エクス・マキナ」というが、演出技法のひとつで、ラテン語で「機械仕掛けの神」を意味するんだとか。


世界トップシェアを誇る検索エンジンを開発したIT企業でプログラマーとして働く24歳のケイレブは、ある社内公募に当選。天才的な技術で巨万の富を築きながらもめったに人前には姿を現さない謎めいた社長・ネイサンが所有する山間の別荘に一週間滞在することになる。
ペリコプターで人里離れたその地に到着したケイレブを待ち受けていたのは、人工知能を搭載した美しい女性型アンドロイド「エヴァ」だった。
大自然に囲まれ、都市から隔絶された辺境でケイレブは、このアンドロイドに「感情」が芽生えているかを判断するという実験に従事する。エヴァの謎めいた美しさと知性に惹かれていくケイレブの運命は・・・。
第88回アカデミー賞視覚効果賞受賞作

ビジュアルが美しい。撮影場所の住居・実験施設はノルウェーで実際に使われているホテルだという。
中庭は日本風で、調度にも日本風のがあった。
人工知能エヴァが実によくできている。何しろ体の一部が透けて見えて、なるほど機械仕掛けという感じだが、エヴァを演じた アリシア・ヴィキャンデルがこれまた美しくて、人間がコロリといくのも当然だと思った。

給仕の女性を演じたソノヤ・ミズノは日系のハーフだそうだ。

映画の後半の方に、クリムトの絵にそっくりなのが繰り返し出ていた。
その前にジャクソン・ポロックの絵も登場していて、これについては出演者の会話の中に登場していたが、クリムトっぽい絵については何も語られなかった。

気になったので調べてみると、たしかにクリムトの1905年の作品で、「マルガレーテ・ストーンボロー=ウィトゲンシュタインの肖像」という題だそうだ。
監督は何らかの寓意をこの絵に込めたのだろう。

で、調べてみると、マルガレーテ・ストーンボロー=ウィトゲンシュタインは哲学者のルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインのお姉さんだということがわかった。
オーストリア・ウィーン出身のウィトゲンシュタインはイギリス・ケンブリッジ大学の教授となり、イギリス国籍を得た。彼がケンブリッジ大学で行った講義を書き留めた2冊のノートは「青色本」「茶色本」として有名である。そのうちの青色本は「Blue Book」。
実は、映画に登場するネイサンが社長のIT企業の社名が「Blue Book」。
ネイサンはウィトゲンシュタインの「Blue Book」にリスペクトされて社名をつけたのだろう。
ついでにクリムトが描いたお姉さんの絵まで自分のものにし、それだけ財力があるんだよということを示したかったのだろうか。
しかし、この絵がドイツ・ミュンヘンにあるノイエ・ピナコテークという美術館にあるのは知られているから、複製品であるのは明らかで、「青色本」への思い入れの強さを示したかっただけかもしれない。
あるいはもっとほかの意味も込められているのか?
いずれにしろ観客にそこまで考えさせるなんて、なかなかゲイコマな演出だとはいえる。